REVERSE ANGLEBACK NUMBER
“2強”を出し抜いたゴールドシップ。
型を崩して勝った内田の深謀遠慮。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byAFLO
posted2013/06/26 10:30
3強対決を制した芦毛のゴールドシップ。一番人気のジェンティルドンナは3着、フェノーメノは4着に終わった。オルフェーヴルとの初対決はいつになるか。
オルフェーヴルが回避した今年の宝塚記念は3強の対決といわれていた。去年の年度代表馬ジェンティルドンナ、春の天皇賞を勝ったフェノーメノ、GI3勝のゴールドシップがその3強だ。そして3強の一角、ゴールドシップが勝ったが2着には3強以外の馬が食い込み、ちょっとした波乱になった。
競馬では三角形は安定した形といわれている。2強の対決はどちらかが崩れたり、共倒れになることがよくあるが、3強では3頭が全滅したり、2頭までが連勝馬券にからまないといったことはまずない。古い例で恐縮だが、トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスの'70年代3強は3度同じレースを走ったが、全て上位を3頭が独占した。今年のダービーも3強とみなされたキズナ、エピファネイア、ロゴタイプのうち2頭が上位を占めた。
だから今年の宝塚記念も一角が崩れることはあっても2頭が連勝馬券にからまないことはないと思われた。しかし、1番人気で、史上最強牝馬かもしれないなどといわれたジェンティルドンナも、天皇賞・春でゴールドシップを破り、上昇度合いなら一番と思われたフェノーメノも2着にさえ入ることができなかった。
ゴールドシップの序盤の位置取りで結果は見えていた。
勝敗を分けたのは最初の1コーナー。ここの並びでほぼ結果が見えたといっても大げさではない。
逃げるのはシルポート。少し離れてそれをジェンティルドンナ、フェノーメノが追いかけ、ゴールドシップは先行する馬を見ながら3コーナーからロングスパートをかける。戦前にはそんな展開が予想されていた。ところが、シルポートが逃げ、ダノンバラードを間にはさんでジェンティルドンナが3番手という並びは予想通りだったが、ゴールドシップがジェンティルドンナの外から並びかけるように4番手につけた。これには驚かされた。馬が行きたがって、自然に4番手になったのではない。ゴールドシップの内田博幸は手綱をぐいぐい押して、ジェンティルドンナの外の4番手というポジションを自ら取りに動いたのだ。
ゴールドシップはエンジンのかかりの遅い馬で、前半はなかなか行き脚がつかない。3コーナーからスパートするときも、最初はこれで大丈夫かと思うような動きしかできない。だが徐々に加速して、スピードに乗ると力強い伸びを見せ、それが尽きることがない。おそらくこの日もそんなレースを見せるだろうと思っていたら、内田は予想を裏切るレースを選択した。