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愛された“薄命の名牝”アストンマーチャンを導いたベテラン騎手の感謝「一生懸命走ってくれてありがとう」《「ウマ娘」にも新たに登場》

posted2022/03/05 06:00

 
愛された“薄命の名牝”アストンマーチャンを導いたベテラン騎手の感謝「一生懸命走ってくれてありがとう」《「ウマ娘」にも新たに登場》<Number Web> photograph by Photostud

父アドマイヤコジーン、母ラスリングカプス。栗東・石坂正厩舎。2006年にデビュー。GIII小倉2歳Sを皮切りに、ファンタジーS、'07年フィリーズレビューと重賞制覇。'07年スプリンターズS制覇。4歳の'08年3月にX大腸炎を発症し、4月21日急性心不全で没。通算11戦5勝

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田井秀一(スポーツニッポン)

田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai

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先日、リリース1周年を迎えたスマホアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』。ゲーム内に新登場することが発表され話題になった一頭が、アストンマーチャンだ。現役時代は3歳牝馬にしてGIスプリンターズSを勝利したものの、わずか半年後に急性心不全で急死した“悲劇の馬”でもある。多くのファンの記憶に残り続ける、名牝の走りを振り返る。これまで有料で公開していた記事を、特別に無料公開します。《初出:『Sports Graphic Number』1037号(2021年10月21日発売)、肩書などはすべて当時》

 わずか4年余りの馬生を全力で駆け抜けた快足牝馬アストンマーチャン。騎手・中舘英二にとっては13年ぶり、そして最後のGI勝利の相棒となった。

「勝負根性の塊のようなサラブレッドでした。騎手の楽しさ、喜びを再確認させてくれた。感謝しかありません」

 2007年。運命の出会いは一本の電話から始まった。「調教に乗りに来てくれるか」。アストンマーチャンを管理する石坂正調教師から中舘に連絡が入ったのは、GIスプリンターズSの約1カ月前のことだった。

 同年の桜花賞では同期の名牝ウオッカ、ダイワスカーレットと3強を形成。秋に向けてスプリント路線に転向した矢先、これまでコンビを組んできた騎手が騎乗できないことになった。ローカルで実績を積み上げ、石坂厩舎の馬を何度も勝たせてきた42歳のベテランに白羽の矢が立った。

異次元の速力は“まさにスーパーカー”

 中舘は1週前追い切りのため、栗東トレセンに駆けつけた。若手時代に訪れたことはあったが、関西馬の調教騎乗のための栗東入りは初めてだった。

「それまでレースをはたから見て“引っかかる馬だな”と他人事のように思っていました。正直、乗りたくなかったですね(笑)。内心ドキドキしながら坂路を1本駆け上がったら、これまで感じたことのないスピード感でした。凄い馬だな、と」

 異次元の速力はまさにスーパーカーの乗り味。手応えと同時に不安も募ったという。

「レースで馬を抑えられるか心配になりましたね。ユタカ(武豊)はよくマイルでこの馬に乗れていたな、と驚きました。ただ、石坂先生から“ハナに行ってもいいよ。お前を乗せるのだから、折り合いを欠くような競馬だけは絶対にするな”と言ってもらって気が楽になりました」

 覚悟は決まった。

【次ページ】 デビュー以来初めて見せた“衝撃の逃亡劇”

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