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岡田武史がW杯直前の暗闘を激白!
あの「突然の戦術変更」までの苦悩。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/09/16 10:30

岡田武史がW杯直前の暗闘を激白!あの「突然の戦術変更」までの苦悩。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「走るサッカー」の裏側にあった、地味だが重要な準備。

 本大会に合わせて岡田がこだわってきた、ある“特別な準備”についても話が及んだ。

 今大会、岡田ジャパンが好成績を収められた大きな要因のひとつに、コンディショニング調整の成功があるのは間違いない。FIFAが公表したデータによればカメルーン戦での日本代表は、一人平均の走行距離で相手より500mも多く走っている。グループリーグの総走行距離ではなんと32チーム中、堂々の2位となっているのである。つまり“走るサッカー”を展開できたことが、勝利の背景にあったということだ。しかも、高地のスイス・ザースフェー合宿、冬の南アフリカを通じてひとりも風邪をひく選手がいなかったのだ。

 岡田はこう言っている。

「監督になって最初のミーティングで『W杯が行なわれるとき南アフリカは冬だから、走るサッカーを実現できる』と選手たちに話して、チームをスタートさせました。僕は本大会に焦点を合わせてスケジュールも組んできたし、高地対策もやってきた。高地順化に関しては、かなりのことを勉強したつもりです」

 岡田は独自で高地順化を学びながらも、さらに専門的な知識を持つ三重大学の杉田正明准教授の力が必要になると判断してスタッフに招き入れている。そして、国内で低酸素ボンベを使って高地順化のための下慣らしを施すなど、早い段階から準備を始めていた。

高過ぎても長過ぎてもダメという絶妙な高地トレーニング。

 1年前、岡田ジャパンがウズベキスタンに勝利してW杯出場を決めた後、指揮官をインタビューしたことがあった。オーストラリアとの予選最終戦の前だったが、岡田はW杯期間中における高地対策の青写真をこのように描いていた。

「メキシコ五輪のときは(海抜)3000mぐらいあって、今度のほとんどの会場は1500mぐらい。僕も何回か試合したことがあるけど、それほど気にならない。だから(南ア入りする前の)事前キャンプをある程度の高さのところでやれればいい。逆に南アに入ってベースキャンプをあんまり高いところにしてしまうと、今度は疲労が回復しなくなる。事前キャンプをある程度高いところでやっておけば、十分じゃないかな、と僕は思っているんですよ。そして、そこで強いチームと練習試合をやっておきたい」

 つまりこの1年前の段階で、岡田は既に高地対策もある程度まとめていたことになる。初戦の1週間から10日前に、南アフリカ入りする意向もこのときに示していたものだ。

 実際この発言のとおり、事前キャンプを1800mのザースフェーで行ない、強国のイングランド、コートジボワールと親善試合を2試合行ない、初戦の8日前に南アフリカ入りしている。尿検査や体調の変化をチェックするコンディショニングシートを活用した杉田の働きもあって、試合に向けて完璧なコンディションをつくることに成功したのだ。

【次ページ】 韓国戦の前に、勇気を振り絞って選手に休みをとらせた。

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