ボールピープルBACK NUMBER
催涙スプレーと鈍かったセレソン――。
ブラジルに負けて「がっかり」の贅沢。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2013/06/18 17:20
デモ行進の先頭と機動隊。ピエロのメイクをした女性たちが、目の前でシャボン玉を吹く……。
日本代表の足は途中からばったり止まった。
ところが後半になると、運動量、スピードともにがくんと落ちたのは、日本のほうだった。
後半開始3分の失点で戦意を喪失したのか、あるいはカタールでのイラク戦の疲労が一気に噴出したのか。とにかく日本代表の足は途中からばったり止まった。ブラジルの喉元にくらいつくどころか、最後の15分は、まるで彼らの調整のために呼ばれたトレーニングマッチの相手のようだった。
最近サッカーを見始めたばかりだという知人の一人は、試合後、この試合の感想を日本からメールでこんなふうに書いて寄こした。
<日本は手も足も出ない、みたいな感じに見えました。それに比べてブラジルは、3点目なんてサラッと躍るように点を取っていきましたね! 残念だけど、これって予想通りの結果だったんでしょうか?>
そのメールに僕は、結果は予想通りだったかもしれないが、内容は期待していたものとずいぶん違った、と返事した。
それに、たしかにがっかりはしたけれど、ブラジルに負けてがっかりできるようになったなんて、君にはちょっとわからないかもしれないけれど、ずいぶん素敵なことなんだよ。
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