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素敵な“ボールピープル”
との一期一会の物語。
~写真家・近藤篤のフォトエッセイ~
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2013/06/17 06:00
『ボールピープル』 近藤篤著・写真 文藝春秋 1800円+税
サッカーを楽しむ会話が聞こえてきそうな写真の数々。
膨大な時間をかけて撮影された写真を見ていると、被写体に対する肯定感と、その写真を撮っている近藤自身が楽しんでいるのが伝わってくる。
「サッカー楽しい?」
「当たり前じゃん(何でこんなことを聞いてくるんだ、カメラを持った日本人)」
「だよね。僕もサッカー好きなんだ」
「……一緒にやる?」
「いいの?」
こんな会話が聞こえてきそうなのだ。
「自由なサッカーを好きな人のために作ったような気がしてる」
「最初に写真を撮ったのは南米をフラフラしていた23歳のとき。『暇だったら写真でも撮ったら?』と言われて、アルゼンチンのリーグ戦を撮影にいったんです。そこで見た人々の感情の発散の仕方が凄かった。ゴールに歓喜するのはもちろん、選手や審判に向かって罵声を浴びせ、時には僕らカメラマンにも物を投げつけてくる(笑)。警官にも野次を飛ばし、催涙弾を投げつけられている。もうムチャクチャなんだけど、彼らの感情を出し切る姿が素敵だったし、『いいんじゃない、これで!』って、何かに縛られない自分の生き方を肯定された気がしたんです」
駆け出しのカメラマンは、それ以降、サッカーと、サッカーを通して出会う人々に魅了されていく。
「サッカーは自由だから、あれだけの人がスタジアムに集まってくるし、ボールひとつあればすぐにゲームが始まる。最初に写真を撮り始めたときはどんな本になるのか、設計図もなかったし、完成形も想像できなかったんです。1枚、1枚写真を積み重ねただけ。でも今は、そんな風に自由なサッカーを好きな人のためにこの本を作ったような気がしてるかな」
文藝春秋BOOKS
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