スポーツはカタチから入る方なんですBACK NUMBER
誰が買う? どこを走る? 最高出力916PS! 価格1億円!! 世界最高のドライバーズカー。
text by
奥山泰広&高成浩Yasuhiro Okuyama & Seikoh Coe(POW-DER)
photograph byMcLaren AUTOMOTIVE
posted2013/06/14 06:00
最新最強最速のハイブリッド・システム!
高 んじゃあ、マクラーレンP1のディテールに迫ろうか!? でもなぁ、このクルマって、語るトコロが多すぎて困っちゃうんだよなぁ。
奥山 あのぉ、さっき「エンジンとモーターで~」と言ってましたけどぉ……その時はさらりと聞き流しちゃいましたけど、このクルマってハイブリッドなんですか?
高 おお! それ!! マクラーレンP1にはさまざまな最先端のテクノロジーが搭載されているけど、中でも特筆すべきなのが、ガソリン・エンジンとモーターを組み合わせた「IPAS(インスタント・パワー・アシスト・システム)」だ。
奥山 静かで省エネで環境にいいんでしょ!?
高 うむ。EVモードではモーターだけで走るため、マフラーからの排気はなく、走行音もほとんどないのは確かだけど、このIPASは省エネや環境への配慮よりも、むしろ速く走るためのテクノロジーなんだ。そもそもガソリン・エンジンには大出力を得るためにターボチャージャーを搭載しているんだけど、ターボってのは構造上、パワーが出るのに一瞬のタイムラグができるんだ。そのラグを補うために、モーターが重要になるんだよ。
奥山 ふんふん。モーターって回転したと同時に、ほぼ最大パワーが出ますからね。
高 そのとおり! モーターとエンジンが互いにシームレスに作動することで、圧倒的なパワーと瞬間的に立ち上がるスロットル・レスポンスが実現しているんだ。
奥山 へえ~、これはモータースポーツ、F1からフィードバックされた技術なんですか?
高 フィードバックではないけど、F1のレギュレーションと深い結びつきがあるのは間違いないね。なにしろ、来年からF1マシンはハイブリッド化され、ピットレーンはEVモードで走行することになるんだから。
奥山 へぇ~。
マクラーレンP1のボディはエアロダイナミクスの極致。
奥山 高さんみたいな蘊蓄オヤジはメカニズムや性能を重視しますが、僕みたいな“走り”に興味がない人は、やっぱりカッコを優先します。マクラーレンP1のスタイルは、いい意味でエグいですね。
高 がび~ん、マクラーレンのデザイナー自慢のエアロダイナミクスが、たったひと言“エグい”で片付けられちまった~。お次は“エッジィな”とかって言うんだろ!? まぁね、ボディ全体を大胆にえぐったようなデザインは、そんな印象を与えるんだろうな。でもね、いたるところにあるエア・インテーク&アウトレットは、エンジンに空気を送り込んだり、エンジンやブレーキを冷やしたりするのに重要な役割を果たしているんだ。
奥山 なるほど。デザイナーが気まぐれでラフスケッチに筆を入れたワケじゃないんですね。
高 うん。インテーク&アウトレットは余計に付けたり、無駄に取ったりしていなくて、そのままボディのフォルムを形成。つまり、ディテールの隅々まで計算されているんだ。だから、こんなにコンパクトで美しいんだ!
奥山 ふ~ん、でも、それってデザイナーとして当然の仕事じゃないんですか?
高 違うんだな。稚拙なデザイナーってのは、余計なもんを足したり引いたりしちゃうんだ。だって、俺が美大の頃の作品が全てそうだもん(苦笑)……毎回、落第点だったっけ(泣)。マクラーレンP1はエアロダイナミクス優先の思想から誕生しているから、デザインにブレがなく、こんな究極のカタチが完成したんだ。
奥山 近未来のオブジェのような印象でありながら、どことなく有機的な感じもしますね。
高 マクラーレンのデザイナーはチーター、セイルフィッシュ、ハヤブサといった陸海空の速い生き物からイメージしたらしいよ。