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報徳学園の“完璧な挑戦”を撃退。
興南が示した「絶対王者」の精神力。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/08/20 20:30

報徳学園の“完璧な挑戦”を撃退。興南が示した「絶対王者」の精神力。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

監督のベンチ内における姿も対照的だった報徳と興南。

 八代が三塁でアウトになった直後、7回表だった。1死二塁から3番我如古盛次は、右中間を深々と破る同点三塁打を放つ。

 5-5。

「ハイサイおじさん」のリズムと指笛の音が乱舞し、球場のボルテージは最高潮に達した。

 だが、そんな場面でもヘッドスライディングで三塁まで到達した我如古は叫び声を上げただけだった。拳を握りしめるわけでも、腕を突き上げるわけでもなく。遠目には、実に淡々とプレーをしているように映った。

「まだ同点ですし、相手を刺激したくなかった」

 これぞ王者の風格。そう言いたくなるようなシーンだった。

 監督のベンチ内における姿も、まさに「動」と「静」。

 報徳の永田裕治は、陣頭指揮を執り、声を張り上げ、手を叩き、選手たちを鼓舞した。

 それに対し興南の我喜屋優は、ベンチの中で静かに佇んでいるだけ。声を発したり、片足を階段にかけたり、腕を組んだりすることさえない。2回裏、5点差をつけられ「崖っぷちだった」と振り返った場面でも伝令も出さなかった。

「まだ序盤だったので、いいのかな、と」

島袋の控えめな感情表現が表す“王の中の王”たる所以。

 報徳の試合運びは、挑戦者としてはパーフェクトだった。

 まずは1回表を0点で切り抜けた。そして1回裏、先制点を挙げた。中盤以降、点差は詰められたものの、終盤勝負まで持ち込んだ。

 報徳として、あれ以上の戦い方はなかった。その上、走塁など小さなミスはいくつかあったが、それを補ってあまりあるファイトを見せた。

 ただ、王者の精神力があまりにも強靱過ぎたのだ。

 ゲームセットの瞬間、興南のエース島袋洋奨は、グラブを持った方の手を軽く持ち上げただけだった。159球を投げ抜き、これだけの壮絶な試合を制したというのに。

 だが、その控えめな感情表現が王の中の王であることを何よりも物語っていた。

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