野球善哉BACK NUMBER
T-岡田先輩の夢を代わりに果たす!
履正社の強打者T-山田が急成長中。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/11 16:00
T-岡田らとの練習で変わった「野球に取り組む姿勢」。
昨秋時点では指揮官の岡田龍生監督にしても、まさかプロを目指せるほどの選手になるとは思っていなかったという。
「去年の冬場に、将来のことを聞いたら、プロに行きたいと彼はいうんですね。僕自身は、厳しいかなと思っていたんですけど、指導者なんで、いいますよね。『目指したらいい。でも、そのためにはやらなアカンことあるんちゃうか』、と。オフにT-岡田や土井健大(オリックス)らが帰ってくるから、どうせなアカンか、あいつらをみて学べと言ったんです。一緒に練習して、何かを感じるところがあったんでしょう」
何を言われたかではなく、意欲の向上が山田を変えたのである。「野球に取り組む姿勢が変わりましたよね。特に春からは責任感が出てきて、それとともに、チームも上がって行きました」と岡田監督は言う。
「岡田さんが果たせなかった舞台でホームランを打ちたい」
昨秋、履正社は府大会準々決勝で敗退している。近畿大会にすら進めていない。それがこの春に大阪府大会の頂点に立ち、続けて夏も制したのだ。夏は13年ぶりの頂点というから、チームにとって、山田の伸びがどれだけ大きかったか、推して知るべしである。
この夏は、T-岡田のさらなる飛躍とともに、その名前からT-山田と話題にされるようにもなった。本人もその気になり、「岡田さんが果たせなかった舞台でホームランを打ちたい」と話すなど、言動までもがノリに乗っている。
力では、大阪大会で散ったPL学園の吉川に及ばないかもしれないが、吉川にはその力をアピールする場がない。しかし、山田には勝てば勝つほどに、その機会が与えられるのだ。そう、浅村がそうだったように、この夏の、この大舞台での活躍が、さらに大きなステージへといざなってくれるのだ。
さて、山田は、浅村になることができるのだろうか。
履正社は大阪桐蔭のようになれるのだろうか。