野球善哉BACK NUMBER
T-岡田先輩の夢を代わりに果たす!
履正社の強打者T-山田が急成長中。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/11 16:00
それほど騒がれる選手なのだろうか?
新聞紙面を賑わせる、彼の評価を見て、そう思わずにはいられなかった。
守備範囲は広い、バッティングも確実性がある。そして、足も速い。確かに、走・攻・守のバランスが整った選手であるのだが、プロ野球のスカウト達が集結するほどのドラフト候補生かと言われると、そうは見えなかった。
履正社の3番で遊撃手を務める、山田哲人をこの春、見た時の印象である。
ところが、それからというもの、山田の評価はウナギ昇りだ。高校の先輩で、現在パ・リーグホームランキングのT-岡田の勢いに乗るかのように、彼の評価も上がってきている。山田はチームでも、そして大阪でも、その存在感を見せつけるようになった。
この夏の大阪府予選は4回戦で、同じく遊撃手としてプロから注目される吉川大幾のいるPL学園と直接対決。上位候補とさえ噂される吉川に、チームとして勝ったのだ。山田自身は2点ビハインドの9回表、同点適時打を放った。
やはり、山田の力量はそれほどのものなのか――。
彗星のごとく現れ、ドラフト戦線に食い込む大阪の選手たち。
思えば、ここ数年の大阪を代表する遊撃手には、春から急速に評価を上げていった選手が多い。入学時から誰もが知っている存在というより、春の大会で彗星のごとく現れ、そのパフォーマンスを夏も見せつけ、ドラフト戦線に食い込んでくる。そして、ドラフト上位指名を受けるのだ。
昨年は春から頭角を現し、夏の大阪府大会でサイクル安打を達成した西田哲朗(関大一)が楽天の2位指名を受けた。一昨年は、一世代上の中田翔(日ハム)らの陰に隠れていた浅村栄斗(大阪桐蔭)が、全国制覇を果たすと、その旗振り役としての活躍が評価され、西武の3位指名を受けた。すでにプロデビューを果たしている。
西田のように、府大会の成績だけで2位指名を受けるのは異例だろうが、浅村のように、夏の甲子園で結果を出し、念願のプロ入りを果たした姿は一つの夢物語を見ているようだ。それまで評価の上がらなかった選手が最後の舞台で躍動して、プロの舞台へ飛び込むというのは、ワクワクする話である。
特に浅村は2年秋に「プロ入り志望」を指揮官の西谷浩一監督に伝えると、激しく、その想いをとがめられたクチだ。「(プロに行きたい?)失礼なことを言うな。そんな取り組みで、プロに行きたいって思うことが失礼。取り組み方を変えない限り、先輩のようにはなれない」。これに発奮しての夏のパフォーマンス、全国制覇、そして、念願のプロ入りだった。
そこで、履正社の山田である。