オリンピックへの道BACK NUMBER
日本陸上界、リオへ向け再スタート!
飛躍のための改革と気鋭の若手たち。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2013/04/19 10:30
ロンドン五輪で、自己ベストであり、日本選手として五輪歴代最高タイムとなる10秒07を記録した山縣亮太。グランプリシリーズ第3戦の織田記念(4月28日、29日)では、その走りに注目が集まっている。
強化選手の対象者を、従来の90名ほどから12名へ変更。
ひとつは、今年8月にモスクワで行なわれる世界選手権の代表選考にあたり、トラック・フィールド種目で「派遣設定記録」を設けたことだ。過去5年の世界ランキングをもとに、世界選手権で入賞の可能性のある記録を設定したのだ。この記録をクリアした選手は、6月の日本選手権で8位以内に入れば代表に選出となる。
こうした独自の記録を設定して選考基準に用いる競技と言えば、競泳が思い浮かぶ。ただし、日本選手権での「一発選考」を課してきた競泳とは異なり、陸上の場合、陸連の定める期間内に記録を突破すればよい。また、従来の選考基準である、世界選手権参加標準記録Aを破り日本選手権で優勝することなどもそのままいかされる。
また、改革の2つめとして、強化選手の指定制度の見直しも行なわれた。これまで4段階あった格付けを、メダル獲得を期待できる「ゴールド」、入賞レベルの「シルバー」の2段階に変更。これによって強化の対象者は従来の90名ほどから12名と大幅に絞られた。
20歳でロンドン五輪に出場した山縣亮太が見せる意欲。
これらの変更の根底にあるのは、意識改革である。
これまでと同様の選考基準の上にあえてレベルの高い記録を示すことで、選手の意識を高めたいという意図であり、強化指定の変更もまた、より上を目指す意識を持たせる意味を持つ。
オリンピックに出場しただけで満足するきらいはなかったか。それが飛躍できない理由ではないか。そうした反省がある。
意識という点で、期待が集まるのは、20歳でロンドン五輪に出場し、100mで準決勝進出を果たした山縣亮太である。
予選では、オリンピックでのこれまでの日本選手最速タイムであり自己ベストでもあった10秒07で準決勝に進出。決勝には進めなかったが、大舞台にピークを合わせ、力を出し切ることができた。そして「まだ決勝で戦える人間ではありません」と、世界のトップクラスの選手との差も肌身に感じることもできた。
昨年9月に右太腿の裏側を肉離れして以来の実戦となった4月7日の東京六大学対校では、10秒47と貫禄勝ち。
「日本記録も出せればと思っています」
と意欲を高めている。日本記録は10秒00。つまり、日本選手初の9秒台を目指していくことになる。