南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER

W杯の挫折が岡崎慎司を進化させる!
Jリーグに帰還して「一から頑張る」。 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2010/07/23 10:30

W杯の挫折が岡崎慎司を進化させる!Jリーグに帰還して「一から頑張る」。<Number Web> photograph by Getty Images

次のブラジルW杯でも岡崎はまだ28歳だ。本田圭佑、長友佑都ら同い年の選手達とリベンジをするにはちょうどいい年齢ではないだろうか

「ワンチャンスで決めるのはFWの理想なんでね」

 そんな失意の中で迎えたカメルーン戦は、後半24分、松井と交代して出場した。ポジションはトップではなく、サイドだった。

「松井さんとかのやり方を見ていたら、今はサイドの方が生きるのかなって思いました。やっぱり、強豪相手の1トップだと自分が裏を狙っていても中盤からなかなかいいタイミングでボールが出ないし、DFに挟まれてボールを奪われてしまう。中盤がかわせなくなった時、圭佑のように下がって来て、中盤のポジションに参加するのはやらないといけないことだと改めて思った。圭佑のゴールも刺激になりました。あそこにいて冷静に決めるのはすごいし、ワンチャンスで決めるのはFWの理想なんでね。僕も次、出られれば1回のチャンスで決めたいと思います」

 途中からでも試合に出場し、少しは気持ちが晴れたのか、岡崎の言葉は、ポジティブなものになっていた。オランダ戦も途中出場を果たし、決定的なチャンスを決めきれなかったが、「反省しつつ、次を狙いたい」と前向きに捉えた。そして、デンマーク戦では途中出場ながら3点目となるゴールを決めた。

「どういう形にせよ、ゴールを決められたのは嬉しい。あそこにいることが大事だし、そこにいることで、またゴールが狙えるという気持ちになれる。圭佑には感謝ですね。温泉でも奢ろうかなって思ってます」

 岡崎は、笑顔で、そう言った。

W杯本番直前で自分の持ち味を出せなくなった理由。

 FWにとって、やはりゴールは良薬なのだろう。岡崎の表情にも明るさが戻ってきた。この頃になると今大会での自分の役割を理解し、やるべきもことも明確になっていた。チームが快進撃を続ける中、自分の居場所と仕事を見付けられたようだった。

「まぁ、あんまり悩んではいないんですけど……。そう見えたのかなぁ。でも、ちょっと考えた部分はあります。イングランド戦とコートジボワール戦では今まで1トップでやってきたことができなかった。そこから自分の持味を出せなくなった。1トップでも引いてきて、他の選手が裏に抜けていくのをフォローする役割が必要だったんですけど、今までそういうプレーをやっていなかった。それで、自分の持味の出しどころがよく分からなくなってしまったんです。そこからスタメンで出れなくなったけど、僕は諦めていない。試合に出たいし、もっと点も取りたい。そういう欲を出して、強い気持ちでいかないとW杯では結果を出せないんです。それはここに来て、一層強くなりましたね」

【次ページ】 力不足を痛感したことで高まった得点へのこだわり。

BACK 1 2 3 NEXT
#岡崎慎司
#南アフリカW杯
#ワールドカップ

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ