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大谷翔平、プロ初登板をどう見るか?
未熟な投球に感じた“鉱脈”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/04/12 11:35
「初回から身体に緩みがあって、キレが無かった」と自らを客観的に語ることができていた試合後の大谷。テレビ観戦した栗山監督は「うまく抑えると逆に課題が見えないから。それ(課題)がはっきりしたからいい」とコメント。
二兎を追ってはいるが、本命はやはり「投手」なのだ!
もちろん試合環境の不利も考慮すべきだろう。
この日の試合開始は午前11時。ずっと一軍に帯同していたため、体がナイターに慣れていた。ランニングの量を多めにするなど工夫はしたが、「朝早いゲームだったので……」と調整の難しさを吐露した。
それでも3回以降は自ら捕手の近藤に100キロ台の縦の大きなカーブを交えることを提案し、体の開きを修正する非凡さも見せた。
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「体が横振りになっていたので、もっと(体を)縦に使いたいということで。緩急もつけられるし、体もいい動きになる」
3回、4回は球速こそやや落ちたが、初めて真っ直ぐで空振り三振を奪うなど1安打無失点に抑えた。この日は結局、4回を投げて5安打3失点で敗戦投手となったものの、近藤は潜在能力の高さを実感していた。
「最後の方は力が抜けて、逆に縦回転の強い球がきていた。真っ直ぐでファウルも取れましたし、空振りも取れるようになった」
開幕から約2週間。大谷は、野手としての「成熟」を見せる一方で、投手としては「未熟」を露呈した。
「まだまだじゃないかなと思いますし、今のままだとダメかなと思う」
だがそのぶん投手の方が鉱脈の大きさを感じさせるのも事実だ。そして何よりあの表情を見ていると、二刀流を貫くのか、またいずれはどちからに絞るのかは別として、今の大谷の気持ちはやはり「投手」なのだなと感じた。