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大谷翔平、プロ初登板をどう見るか?
未熟な投球に感じた“鉱脈”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/04/12 11:35
「初回から身体に緩みがあって、キレが無かった」と自らを客観的に語ることができていた試合後の大谷。テレビ観戦した栗山監督は「うまく抑えると逆に課題が見えないから。それ(課題)がはっきりしたからいい」とコメント。
投手と野手では、人格まで変わってしまうかのようだった。
3月29日の開幕戦、「8番・ライト」でスタメン出場した日本ハムの大谷翔平は「力み」とはまったく無縁だった。穏やかな表情で、軽やかにスイングし2安打1打点。ヒーローになっても試合後、興奮している様子はまったく見られなかった。
何を聞かれても、定型通りに、淡々と「嬉しかった」と「よかった」を繰り返した。
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「すごく嬉しかったですし、何より勝てて本当によかったと思います」
こんな18歳がいるものだろうかと思ったものだ。
ところが4月11日、イースタン・リーグのロッテ戦で投手としてプロ初先発した大谷は、18歳そのものだった。立ち上がりから口を真一文字に結び、目も爛々としていた。だが、そのぶんバッティングとは対照的に力みまくっているように映った。
顔に赤みが差し、奥歯を噛みしめ……感情を露わにする大谷の姿。
1回裏、先頭の加藤翔平に内野安打で出塁を許すと、いきなりけん制悪送球で二塁に進めてしまった。次打者は制球が安定せずフォアボール。3番・荻野貴司はピッチャーゴロに仕留めたが、二塁への送球がワンテンポ遅れ、しかも若干低かったため、ベースカバーに入った遊撃手が一塁へ悪送球。ゲッツーを取り損ね、1点を先制された。
顔に赤みが差し、奥歯を噛みしめる。打席にいるときよりも、はるかに揺れる感情が見て取れた。こんな大谷もいるのだ。
続く2回も抜け球が多かった。球速こそ150キロ前後をマークしていたが、高めに浮いた真っ直ぐをとらえられ、3安打を許し2失点。バッテリーを組んだ捕手の近藤健介が証言する。
「1、2回は体の開きが早かったので、シュート回転してボールが真ん中近辺に集まってきてしまった」
大谷自身もこう反省を口にした。
「立ち上がり、投げ急いでいると言われた。(インサイドへ)すごく危ないようなボールもあったので、そこは反省したい」
大谷が冷静さを欠いていた、何よりの証拠とは?
また2回にはこんなシーンもあった。
2死二、三塁の場面で、打席に2番・高濱卓也を迎えた。カウントは、2-2。そこで大谷は高めの変化球を投じたのだが、ジャッジが下る前に自分でストライクだと判断し一瞬、ベンチに帰りかけた。だが結果はボールで高濱を四球で歩かせる。そして続く3番・荻野に2点タイムリーを浴びた。
その後の結果は必然だったように思える。
たとえ明らかなストライクであったとしても審判の権限を軽んじるような行為は控えるべきだ。それで審判が気分を害してしまったら損するのは自分である。あの行為は大谷が冷静さを欠いている何よりの証拠に見えた。