サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
4人の“FW”香川、岡崎、清武、乾。
それぞれの葛藤と代表のこれから。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/04/12 10:31
右上から反時計回りで香川、岡崎、清武、乾。4人の“FW”は、6月4日、埼玉スタジアムで迎えるオーストラリアとの決戦でどんな成長を見せてくれるのだろうか。
淡々とした語り口の中に、キーワードは潜んでいる。
勝てばブラジルW杯への出場が決まるヨルダン戦の3日前、清武弘嗣はこう語った。
「自分は『フォワード』の選手なので(決定的なチャンスに)絡まないといけないと思います」
試合前日にも、こう話している。
「『フォワード』なので、やっぱりゴールに絡むプレーがしたいです」
清武が日本代表でプレーするのは、メディアからは右MFや左MFと表記、紹介されることの多いアウトサイドの攻撃的なポジションだが、選手たちの認識は少し違う。日本サッカー協会のメンバー発表の際には、彼らはFWとして登録されている。それは、つまり、ザッケローニ監督が彼らをFWとして認識している、ということを意味しているのだ。
左サイドで起用されることの多い乾貴士もこう語る。
「『フォワード』でしょ。もう、完全に。攻撃的ッスもん。もちろん、守備もしないとダメですけど、基本は攻撃のことを多く考えてますね」
彼らが『フォワード』と呼ぶこのポジションを代表でプレーしているのは、清武と乾、そして香川真司と岡崎慎司――。世界最速のW杯出場決定がかかったヨルダン戦に向けて、4人の『フォワード』たちは何を思ってピッチに立ったのか。そして、今、何を思うのだろうか。ヨルダンでの取材に加えて、清武、乾、岡崎の3人には、ドイツ帰国後にもさらに追加取材を行ない、じっくりと話を聞いた。
「攻撃」をテーマに臨んだカナダ戦だったが……。
ヨルダン戦を4日後に控える3月22日に組まれたのが、カナダとの親善試合だった。レギュラーの本田圭佑と長友佑都が負傷欠場したため、これまでとは異なったメンバーで臨むことになった。
カナダ戦に向けた練習では、攻撃のメニューに多くの時間が割かれた。対戦相手であるカナダの研究は必要最低限しか行なわれていない。この試合で「攻撃」がテーマになるということは、ヨルダンを攻撃力でねじふせたいという監督の意図が透けてみえたし、そのことを攻撃的なポジションの選手たちは意気に感じていた。
「W杯のアジア予選では圧倒的な強さを見せつけて勝ちたい」
キャプテンの長谷部誠がそう口にしてきたチームとしてのテーマにも合致していた。
しかし、試合では思うような攻撃を見せられなかった。前半は香川がトップ下を務め、岡崎が右FW、乾が左FWに。前半9分に岡崎のゴールはあったものの、全体的には攻守ともにうまく機能しなかった。後半から岡崎が退いて、香川が左FWに、乾が右FWにポジションを移し、中村憲剛がトップ下に入った。これでチームはいくぶんペースを取り戻し、ハーフナーの追加点で2-1で勝利を収めたが、選手たちの表情は明るいものではなかった。
試合後、悲観することなく、冷静な言葉を発したのは岡崎だ。自らの隣でプレーしたトップ下の香川について口を開く。
「サイドに開いた時に、(トップ下の選手は)寄ってくるなという形で監督から言われていたので、自由に動き切れていなかったというのもあったのかもしれない。考えすぎてしまってね。もっと、自分のやりたいようにできるようになれば……。(香川)真司と何回かワンツーをチャレンジしたシーンもあったし。ああいうのがカギになってくるんじゃないかなと思います」