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ダルビッシュ、衝撃の今季初登板!
“ほぼ完全試合”に導いた球種とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2013/04/03 15:50
パーフェクトゲームを逃した瞬間、打球の行方を追いながら照れたように少し笑ったダルビッシュ。今回はチャンスを逃したが、本当の伝説の始まりはこれからだ。
惜しかった。
とにかく、惜しかった。
ダルビッシュ有にとっての今季初登板。アストロズ戦で9回2死までパーフェクトに抑えながら、最後の最後、9番打者のゴンザレスに自身の股間を抜ける中前安打を許し、完全試合を逃してしまった。
逃した、という表現がぴったりだった。
ダルビッシュはアストロズ打線を圧倒、現地の放送では、「1、2回はオープン戦のような余裕があった。汗もかいてないんじゃないか?」と評されるほどの投球だった。
8回3分の2、奪三振14個はメジャー移籍後では、最多の数字である。
ダルビッシュの出来栄えを見る限り、いつの日か、いや、今季のうちにノーヒッターを達成する可能性があるのではないか――。そう思わせるほどの、ほれぼれとする投球だった。
4月2日のダルビッシュは“unhittable”、ではその投球内容はどんなものだったのか。分析していくと「進化」したダルビッシュが見えてくる。
「フォーシームは投げてないんで」
2年目の投球内容の大きな変化は、試合後のインタビューですぐに確認できた。
「フォーシームは投げてないんで」
日本人が好む、回転のきれいなストレート。2年目のダルビッシュはフォーシームを封印、カット・ファストボールでカウントを整えて、最後は切れ味鋭いスライダーを武器にして三振を取る。そのパターンが確立していた。相手も分かってはいるのだが、対応できなかった。
「フォーシームは投げない」という言葉を聞いたのは、私にとっては2人目である。実はヤンキースの黒田博樹も、メジャーに行ってからはほとんどフォーシームを投げなくなったという。黒田は、
「釣り球のように、大きく外す時だけです。じゃないと、どでかい打球を外野スタンドに運ばれてしまいますよ」
と話してくれたことがある。