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日本人にとって、W杯とはいったい何なのか。~指揮官・岡田武史に問う~
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKaoru Watanabe(JMPA)
posted2010/07/15 06:00
岡田監督の手法は過渡期の遺産として封印されるべき。
これまで日本がグループリーグを突破できたのは、2002年日韓大会だけだった。当時はホスト国としてベスト16に進むというノルマがあったため、自分たちのスタイルを気にする余裕などなかった。
だが、岡田監督がスタイルより結果を優先して、国外でのベスト16を成し遂げた今なら、こう問いかけることができる。
自分たちのスタイルを捨てて、グループリーグを勝ち上がることに成功した。ならば次は、スタイルにこだわって勝つことに挑戦すべきではなかったか、と。
パラグアイ戦後、岡田監督は日本サッカーの今後について問われ、「今は日本サッカーのことまで考える余裕はない」と答えた。もちろんサッカーの戦術に正解はなく、徹底的に相手の弱点を突き、勝ち上がって行くというやり方もある。
しかし、1大会の結果だけでなく、10年先、20年先を考えたとき、より収穫が多いのは、スタイルにこだわるサッカーと、相手の弱点を突くサッカーのどちらかといえば、前者のはずだ。
岡田監督が成し遂げたものは、永遠に日本サッカー史の中で輝き続ける。だが、その手法は日本サッカーの過渡期の遺産として、二度と開けられない箱の中に封印されるべきものでもある。