欧州サムライ戦記BACK NUMBER
好調ミラン相手に負傷も好アシスト。
長友佑都がダービーで放った光。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/02/25 13:35
試合後、「(怪我は)ひざを軽くひねっただけという感じ。(中略)相手の選手と2回ほど接触があり、100%の力でプレーできないのならば交代した方がいいかと思った」と元気に語っていた長友。
“俺のホームはサンシーロ”と言える唯一の日本人、長友佑都が24日、自身5度目のミラノ・ダービーに挑んだ。10月のカードでハンドによる、まさかの退場処分を受けている長友には心中期するものがあった。
「ダービーはやっぱり特別。この雰囲気は、何度経験してもいい。選手として誇りに思う」
低調続くインテルは、今季26節目にしてミランに順位表でまさかの逆転を許し、エースFWミリートも左膝重傷を負ったばかり。一方のミランは移籍後3戦4発の悪童FWバロテッリ効果で波に乗り、直前のCL決勝トーナメント1回戦ではバルセロナを破っている。勢いの差は明らかだった。
今やセリエA最強の左ウイングとなったFWエルシャーラウィを止めるのが、右SBとして先発した長友に与えられた役目だった。ただし、同じサイドの前方に入るMFグアリンに積極的な守備は期待できない。
ミランの左SBデシーリオの前には広大なスペースが広がり、隙あらばインテル陣内に侵入してクロスを入れようとしてきた。エルシャーラウィと合わせて2人を1人でカバーするのは、いかに運動量豊富な長友といえども荷が重過ぎた。
バルサ戦で自信を強めたミラン守備陣に、インテル攻撃陣は通じず。
前半21分、速攻の意識が出てきたミランのMFボアテンクのスルーパスがインテルのペナルティエリア内へ入った。長友のチェックも及ばず、エルシャーラウィが右足アウトサイドで合わせた。赤と黒の歓喜が爆発するサンシーロ。
痛恨の失点に「ちょっと奪われ方が悪くて、自陣に戻るのが遅れた。自分たちがボールを持ったときには、いいポジションをとらねばならないし、難しい状況だった」と試合後、長友は悔しさをにじませた。
反撃を試みようにも、インテルの攻め手はボールに対する適切なポジショニングがとれずバラバラだった。先のバルサ戦で、相当の自信を付けたミランの守備ブロックを脅かすにはまるで至らない。
後半に入り、大量にたかれた発煙筒の煙で視界が白くかすむ。ただし、左SBへポジションを変えた長友には、途中出場した僚友MFスケロットが、ゴール前へ走駆する姿が見えていた。