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メジャーに現れたケタ外れの才能!!
“超”投手ストラスバーグの悩みとは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/06/27 08:00
秘蔵っ子の貴重なイニングをオールスターに与えるのか?
さて、ナショナルズとして困るのは、ストラスバーグを起用するにあたってはイニング制限が設けられているのに、オールスターに選ばれたとすると、1イニング、もしくは2イニング分をナショナル・リーグのために「提供」しなければならなくなることだ。
ストラスバーグのオールスター登場は誰もが望んでいることだけに、ナショナルズにとっては痛しかゆしの問題になりそうだ。
実際、今年ナショナル・リーグの指揮をとるフィリーズのチャーリー・マニュエル監督はストラスバーグを選ぼうという意向を持っているし(メジャーでは投手のファン投票はなく、監督推薦のみによって選ばれる)、ナショナルズのリグルマン監督も、
「もしストラスバーグが選ばれたとするなら、協力は惜しまないつもり」
と話している。
ナショナルズに問われるスターに対するマネジメント力。
ナショナルズは2005年にワシントンに移転し、2007年をのぞき最下位が定位置。ストラスバーグはフランチャイズをワシントンに移してから初めてのスター候補生だ。ナショナルズにとっては大投手に育てるだけでなく、スターとして売り出していく「マネジメント手腕」が問われている。
残念ながら、前身のモントリオール・エクスポズ時代からの来歴を振り返ってみても、この球団にそのノウハウはストックされているとは思えないところが心配だ。
ナショナルズとしてはストラスバーグがフリーエージェント権を獲得するまでの6年間、たっぷり働いてもらわなければならない。これは勝利の意味だけでなく、観客動員=収入にも直結するからだ(球団職員は早くも「ストラスバーグ・バブル」によるシーズンオフのボーナスに期待しているようだ)。
いま、メジャーリーグが若手投手に投球回数制限を設けているのは、選手寿命を大切にする発想と同時に、選手を「動産」という資産と捉えている側面もある。
スターという資産には、長く働いてもらい、球団の収入源にしていく……。
ストラスバーグはワシントン・ナショナルズという冴えないチームが、ドラフトによって獲得できた球団史上最高の資産である。
さてさて、球団側はどんな育て方をするのだろうか?