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内田博幸と馬券の夢を乗せた金の船。
大胆な後方一気で魅せた、有馬記念。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2012/12/27 10:30
内田とゴールドシップは共同通信杯で初めてコンビを組んでから6戦5勝、うちGI3勝を誇る。芦毛馬の有馬記念制覇は1990年のオグリキャップ以来、2頭目。
大ケガを乗り越えたウチパクの「夢を乗せた金の船」。
「去年の今頃は、有馬記念を家で見ていました。1年後にこうしてそのレースを勝つことができたんですから、うれしいですよ」
内田は去年、落馬で大きなけがを負った。頚椎を骨折する騎手生命にかかわるような重傷だった。苦しいリハビリを乗り越えて、復帰したのが今年のはじめ。しばらくはなかなかカンも戻らなかった。その内田が復帰後、はじめて重賞を勝ったのが共同通信杯のゴールドシップだったのだ。
白雪姫は眠りから覚めると白馬の王子様が待っていたが、ウチパクが眠りから覚めたときには、王子さまならぬ白馬が待っていたというわけだ。男馬だから、内田に目覚めのキスをするということはなかったろうが、勝ちの味を思い出させてくれたのはまちがいない。
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苦境のときにできあがった結びつきほど強いものはない。内田がゴールドシップに寄せる信頼度は格別のものがあるのだろう。常識には反していても、この馬にはこの乗り方がベストだ。ベストを選ぶことができるのは自分をおいてほかにない。そんな自負が、皐月賞と有馬記念のふたつのGIから伝わってくる気がした。
「夢を乗せた金の船ですね」
朴訥な男が、珍しく見出しになるセリフを吐いた。