【10月】青木功、尾崎将司、中嶋常幸──伝説の漫談!?

　持ち味のぼやき精神を発揮して日本オープンを制した久保谷健一もよかったが、やはりこの大会の主役は、予選ラウンドでそろい踏みしたAONだったように思う。

　以前のコラムでも書いたが、3人そろってのトリオ漫談……、いやトリオ会見も出色の出来だった。誰もがマネをしてほしいのだが、誰もマネできないであろうコメントの切れ味を見せつけてくれた。

「嘆くな、嘆くな。今までいっぱい稼いできたんだから、こうしてお釣りが来るんだよ」と青木から言われた尾崎の「あんたに負けたのが一番腹立つんだよ！」という秀逸な返しの一言。個人的に今年のベストコメントだった。プレーではさすがに往時の迫力は見せられずとも、レジェンドはレジェンドたる理由をきっちりと示したのだった。

　池田勇太、石川遼、松山英樹が30年後にこれほどの存在感を保ち、同じようなやり取りをできるだろうか。そう考えると、やはり現時点での彼らはまだまだAONの足元にも及ばないのである。

【11月】石川遼──2年ぶりの優勝でスランプ脱出か。

　石川はいつもとびっきりのポジティブ人間だった。たとえばプロ1年目の開幕戦、最終日を迎えるにあたって「残り3ホールで首位と4打差ならバーディー、イーグル、バーディーで追いつく」と当たり前のように話していたものだ。どんな苦境も前向きな状況に捉え直してしまう。ちょっと脳天気、と言いたくなるぐらいの楽天家だった。

　だが、すべて過去形の話である。2年間も優勝から見放され、20歳を越えて大人にもなった。ハニカミ王子と呼ばれたような石川遼はもう影も形もなくなった。

　首位に立っていた三井住友VISA太平洋マスターズの最終日。後半から雨が降り始めると、「今まで天気が悪い中での優勝はない。またダメなんじゃないか」と不安が頭をよぎったという。「この2年で別人になっちゃったな」と自分の変化を自覚しつつ、それでも何とか1打差で勝ちきることができた。思い切り流した涙は2年間の苦悩を洗い流してくれただろうか。

　内面だけではなく、ゴルフのスタイルも変わった。どちらの変化も間違いなく成長と呼べるもの。もう無邪気な子供でなくなった石川は、来季から米ツアーに主戦場を移す。

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