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富豪オーナーの堪忍袋は破裂寸前。
トーレス不発でベニテスの首が飛ぶ?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/17 11:35
欧州王者の9番(写真左)トーレスと南米王者の9番ゲレーロ。世界一のクラブ、世界一のストライカーの座は南米のものとなった。
最後の最後が決められなかったチェルシーの攻撃陣。
38分、ビクトル・モーゼスが、カーブをかけてファーポスト内側を狙ったシュートは、カッシオの横っ跳びセーブに阻まれた。試合終了間際、枠を外れたマタのシュートは、ニアポスト脇の厳しい角度から放たれたものだった。ところがトーレスは、ゴール正面での2度の絶好機をふいにしている。
37分、フランク・ランパードが絶妙のロングボールを放り込むと、トーレスは、完璧なコントロールを見せたものの、肝心のシュートは、力なく相手GKの真正面に飛んだ。
85分には、セサル・アスピリクエタのスローインが、幸運にもトーレスの足元に届いた。ゴールまでの距離は6mほど。目の前にはカッシオのみ。左右どちらでも、冷静にGKの脇を狙ってさえいれば、ネットが揺れていただろう。しかし、焦り気味に放ったシュートは、正対していたコリンチャンスの守護神に防がれた。
後半ロスタイムには、ヘディングを決めたが、皮肉にもオフサイドの判定でゴールは無効となった。
試合後のピッチ上には、半ば茫然と立ち尽くしながら、ベニテスの話に耳を傾けるトーレスの姿があった。
分析と改善に余念のない指揮官は、同郷のストライカーに、今後に向けてのアドバイスを送っていたのかもしれない。会見の席でのベニテスは、「決勝ともなればチャンスは限られるのだから、確実にモノにしてもらわなければならない」と語った。
ファンから敵対視されているベニテスの命運は、この敗北で風前の灯。
だが、トーレス不発による敗戦で、ベニテス自身の今後が益々怪しくなった。
因縁の元リバプール監督は、就任当初からチェルシー・ファンに敵対視されている。
決戦のピッチで結果を出すためには、ブラジルから大挙して来日し、ホームゲームも同然の雰囲気を生み出したコリンチャンス・ファンのように、「12人目」の加勢が重要だ。ベニテスがファンを味方につけるには、彼らが辛抱強くサポートしてきた、元リバプールCFの本領発揮を実現して結果を出し続けるしかない。
その手始めとして、世界一の称号と今季初のタイトル獲得を懸けた今回の決勝は、格好の機会となるはずだった。