野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
伊東勤、ロッテ監督就任の衝撃。
60年前の恐怖の因縁、復活か!?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKyodo News
posted2012/12/17 10:30
ロッテ監督就任にあたって「日本一を勝ち取れるチームを作る。派手さは不要、守り勝つ野球をやりたい」と語った伊東氏。重光昭夫オーナー代行は「我々、千葉ロッテマリーンズも目指すべきは常勝チームを作り上げることです」と言葉を添えた。
「史上最大の下剋上」の原動力はカネやんの怨念か!?
そういえば、マリーンズには「西武ドーム限定応援歌」なるものが存在した。
どういう経緯で生まれたか詳細はわからないが、「西武には負けられない 魂を込めて戦え」という歌詞のそれは、もう因縁をバリバリに意識しているかのようなアジソングであることは間違いない。
最近はやっているのをとんと聞かなくなったが、忘れられないのが2010年のクライマックスシリーズファーストステージ第1戦。4点差で迎えた最終回の攻撃で、初っ端からこの「西武には負けられない」が大合唱され鳥肌が立ったのをよく覚えている。
その回、マリーンズはエンドレスで歌われ続けたこの応援歌に乗って、あれよあれよと大逆転。そのまま勢いに乗って「史上最大の下剋上」と呼ばれるシーズン3位からの日本一を達成するのだが、そのきっかけをもたらしたものに、少なからず、あの応援の力、そして「西武には負けられない」という球団としての意地、カネやんの怨念他エトセトラ……があったように思えてならない。
愛着ある古巣に反旗を翻した伊東勤は何を思う……。
その千葉ロッテマリーンズの新監督に西武黄金時代の司令塔・伊東勤氏が就任するというニュースが出たのが10月17日。その報を聞いた瞬間、これは面白くなると戦慄した。
というのも、2年前に伊東氏をインタビューした時、“将来の夢”としてこんな発言を聞いていたからだ。
「今の僕の夢は、他のチームのユニフォームを着て西武を倒すことです」
西武黄金時代を知りつくし、辻・平野・秋山・清原・石毛・田辺・工藤などのメンバーがチームを去っても、尚「西武野球の伝統を守りたい」と、FA移籍も眼中になく26年間愛するライオンズに留まり続けた――そんな野球人生との決別宣言にはただただびっくりした。
決して多くは語らなかったが、その空気から、'07年の監督解任劇というものがよほど悔しかったのだろうということは容易に想像できた。