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<40代が繰り広げる賞金王争い> 藤田寛之と谷口徹の大いなる野望。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2012/11/22 06:01
家族よりも自分の夢を優先すると話す、藤田の真意。
「プライオリティーで言えば、家族は自分自身の夢や希望、挑戦の下にあるんです。僕ぐらいの選手では、そこは両立できないものだと思ってます。世の中の風潮と違って、子供と一緒にいて楽しいことをしてあげようという考えはないんですよ。父親がどこかで本当に頑張っているのであれば子供には絶対に分かると思うんです」
夫として、2人の子供の父親としてよりも、まずはプロゴルファーとして生きたい。藤田はそんな熱いオヤジ論を語るのだった。それを見て「家族がかわいそうやなあ」と突っ込みを入れる谷口だって同じようなものだ。
昨季終盤に自身15年ぶりに11週連続での試合出場を敢行した時のことだ。「今までそんなに試合に出なかったじゃない」と妻・亜紀さんに文句を言われても、「優勝したいから絶対に行く」と突っぱねて会場に向かった。
「家ではブーイング食らってますよ。今まではそんなに試合に行かなかったじゃんって。でも今は独身時代に戻ったくらいの戦う気持ちがある。2人目の子供が生まれてからはゴルフに対する情熱が少し消えていたんですけどね。娘にも『パパは試合に行ってくるからごめんね』と言ってますよ」とその時に苦笑いしながら語っていたものだ。
うるさいオヤジと思われようが、谷口は若手に小言せずにいられない。
必死に物事に打ち込むオヤジの背中を見せたいのは、何も家族に対してだけではない。ツアーを引っ張る立場になったからこそ、ついついもどかしい思いで後輩たちには小言を言いたくなる。
今季のツアーも韓国勢の台頭は止まず、ベテラン対韓国勢というのが一つの構図になっていた。李京勲(イ・キョンフン)や金亨成(キム・ヒョンソン)ら韓国の若手はツアー初優勝を挙げ、その勢いで賞金ランクでも上位につけてきた。それにひきかえ、オフに自分たちと一緒に練習しているような日本の若手は……。うるさいオヤジと思われようとも谷口は言わずにいられないのだ。