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<40代が繰り広げる賞金王争い> 藤田寛之と谷口徹の大いなる野望。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2012/11/22 06:01
2人が繰り広げる、「愉しみ」としての“舌戦”。
谷口といえばツアー一舌鋒の鋭い男。ようやく追撃態勢に入ると、さっそく得意の“口撃”モードにもスイッチが入った。
「藤田くんには悪いけど早く抜かして上位にいきたいですよ」
賞金王争いの約束をしておきながらシーズン中盤に足踏みをしていたのは谷口の方だ。だが、そんなことは棚に上げて自信満々の口ぶりで言い募る。その言葉を記者から伝え聞いた藤田も涼しい顔でやり返す。
「どうせ抜かれるなら谷口さん以外がいいですね。だって、そうなったらあの人うるさいでしょ。でも、一度抜かれてから抜き返すのも静かになっていいですかね」
互いにリスペクトがあってこその舌戦だとこちらにも分かるのだが、藤田に言わせるとそれは同世代のライバル心とは少し違った感覚なのだという。
「谷口さんがいて刺激にはなる。谷口さんと競った試合展開になることは、自分にとって起爆剤でもあるんです。だけど、それはモチベーションにはならない。言ってみれば、愉しみですね。言葉のやり取りだってお笑いの一部として言ってますから。たぶん谷口さんも本心の部分ではそうだと思いますよ」
海外メジャーの規格外の魔力が、藤田と谷口のモチベーションに。
では、この年齢になってもなお藤田を突き動かすものは何なのか。
「自分との戦いが目標であり、モチベーションなんですよ。限界を決めてしまうのも自分」
そんな、自分との戦いの成果を示す最高の舞台が海外メジャーである。賞金王争いを演じてはいるが、藤田も谷口も日本ツアーの賞金ランク1位がゴールとは思っていない。視線の先には来季のメジャー初戦、4月のマスターズへの出場がある。
もちろんマスターズ以降の全米オープンや全英オープン、全米プロにも是が非でも出場したい。いささかの自信をもって臨んだとしても、易々と打ち砕かれるとんでもないコース、規格外の選手がメジャーでは待っている。2人ともその魔力に取り憑かれてしまっているのだ。