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<40代が繰り広げる賞金王争い> 藤田寛之と谷口徹の大いなる野望。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2012/11/22 06:01
賞金王争いが佳境を迎えている。互いに切磋琢磨し合い、
間近に見える栄光。しかしその目はさらに先を見据えていた。
40代ゴルファーの果てなき戦いは続く。
43歳の藤田寛之と44歳の谷口徹が賞金王争いの主役を張っている。約2500万円差の1位と2位。世界的に若年化の進むツアーの現状にあって、アラフォー戦士、いや、もはや40歳周辺でもなくなりつつある2人の奮闘は驚異的なことに思える。
韓国人賞金王の流れを止めたのは、石川でも池田でもなかった。
一昨年、昨年と韓国人選手が並んだ賞金王の系譜。その流れにストップをかけるのは石川遼か、はたまた池田勇太かとシーズン前は思われていたものだが、3年ぶりに刻まれる日本人賞金王の名前は40代のベテランいずれかになりそうな気配だ。
「僕らはなんだかお互いがいて生かされているような感じがする。一方のゴルフがダメになったら、もう片方も同じようにダメになっていくんじゃないかな」
そう語るのは谷口である。
「同世代で頑張っている選手はもうそんなにいなくなってしまった。夏くらいに藤田くんに言ったんですよ。最後の日本シリーズまで2人で賞金王を争えるように頑張ろうって」
言われた方の記憶は少し違う。
「最初は僕の援護射撃をしてくれるって言ってたはずなんですけどね。そのうちヤル気になっちゃったんでしょう。まあ、それも谷口さんらしいんですけど」
いつものことだといった様子で藤田は苦笑いした。
この数年の激闘譜がいつしか練り上げたライバル関係。
口角泡を飛ばして突き進んでくる谷口。それを真っ向ではなく、少しいなして応戦する藤田。うまくかみ合ったライバル関係は以前から続いてきたわけではなく、この数年の激闘譜がいつしか練り上げたものである。
例えば、シーズンの掉尾を飾る日本シリーズJTカップは2年続けて2人のワンツーフィニッシュで幕を閉じている。一昨年に谷口の猛追を振り切って優勝を飾った藤田が、昨年もプレーオフの末に連覇を果たした。
10月のブリヂストン・オープンも記憶に残る試合になった。谷口が最終日の最終ホールで劇的なイーグルを奪い、首位の藤田を1打かわして大逆転優勝を決めたのだ。「ここで負けていたら賞金王争いは終わっていた」という危機感を見事に結果につなげ、遠のきかけていた藤田の背中を再び視界にとらえた。