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今年の全英は“前回王者”が2人!?
ウッズとミケルソン、磐石の完熟期。
posted2014/07/16 11:15
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Jun Hiraoka
今年の全英オープンの舞台、ロイヤルリバプールに足を踏み入れた瞬間、耳に入ってきたのは地元の人々がキングス・イングリッシュ独特の発音で口にするタイガー・ウッズの名前ばかりだった。
「タイガー・ウッズは、どこだ?」
「タイガーは、もう来てるのか?」
「タイガーは、もう回ってるぞ!」
この地で開かれた2006年の前回大会を制したあのときから、ウッズは米国人でありながら英国ホイレイクの街のヒーローになった。当時のウッズは、5月に最愛の父アールを失い、6月の全米オープンでは予選落ちを喫し、失意の底でロイヤルリバプールにやってきた。
ウッズの涙に、ホイレイクの人々ももらい泣き。
だが、「ここに来たら平和な気持ちになった」というウッズは傷心を戦意へ変えていった。80個とも100個とも言われるバンカーを徹底的に避けるため、ドライバーの封印を決意。それでも初日の16番だけは「ついつい」ドライバーを握ってしまったが、以後はグリーンに近づきたい気持ちを必死に抑制しながらティショットを刻み、サンデーアフタヌーンにクリス・ディマルコとの接戦を制して、メジャー11勝目を達成。そして、号泣した。
バッグを担いでいたのはベテランキャディのスティーブ・ウイリアムス。勝利を決めた瞬間、ウッズは少年のようにウイリアムスの胸に飛び込んだ。「お父さんに捧げる優勝だね」とウイリアムスから耳元で囁かれ、堰き止めていた感情が一気に溢れ出したのだろう。ウッズは顔をくしゃくしゃにして、ボロボロ涙をこぼした。
「今日は天国の父がずっと一緒にいると感じていた。だから、本当にいいプレーができた」
そんなウッズの涙に、ホイレイクの人々ももらい泣きした。