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<プロゴルファー7年目の決意> 有村智恵 「自分のためにアメリカへ」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/11/08 06:02
チェ・ナヨンのメジャー制覇に沸き上がった、後悔の念。
父の電話から約2週間後、形にならない気分は、はっきりとした思いに変わり始める。
7月上旬の海外メジャー、全米女子オープンでチェ・ナヨンがぶっちぎりの優勝を飾った。有村はこの大会の出場資格を持っていたものの、シーズン前に決めた方針通りに欠場していた。同い年でプライベートでも親交のあるチェ・ナヨンの晴れやかな笑顔と圧倒的な強さ。翻ってそれをテレビで見ていただけの自分。自然と後悔の念が沸き上がってきた。
「ナヨンが優勝したのを見て、なんで私は出なかったんだろうと思いました。まだ手首が怖いところはあるけど、来年はアメリカのメジャーに挑戦したいです。あのタフなコースで勝つためにはどうしたらいいかを考えて今年は行動していきたい」
チェ・ナヨンに触発されたように、直後の試合でシーズン2勝目を挙げると、優勝会見では自分の目指すべき道を語った。その思いは必然的に米ツアー挑戦の決断へと傾いていくものになった。
太田雄貴、錦織圭……他競技の選手との交流で強まった海外志向。
もうひとつ海外志向を強めた外的要因は他競技のアスリートの存在である。
有村が米ツアー挑戦の意志を固めた8月はロンドン五輪の真っ只中だった。ゴルフが復活するリオ五輪での金メダルを夢に見る有村にとって、フェンシングの太田雄貴や競泳の立石諒ら親しい選手たちの活躍はひときわ輝いて見えた。4年に一度の大会に全てを懸ける彼らとの交流。恵まれた女子ツアーの世界で過ごすうちに、知らず知らずに生じた甘えに気づくこともあったはずだ。
五輪後には太田から銀メダルを見せてもらい、10月には同じく五輪で活躍したテニスの錦織圭とも初対面して、あらためて海外への思いを強くしたのだった。
「テニスはツアーで世界を飛び回るし、試合数も多くてゴルフより大変。私たちゴルファーも疲れたなんて言ってられない。甘えてられない。私はまだ日本でしか優勝したことがないけど、みんな世界で活躍している。早く追いついて肩を並べたい」