「サネ（実松）は、よく守ったと思います」

　阿部がベンチからも外れた第4戦。スタメンに名を連ねたのは、前日にバッテリーミスを犯した実松だった。

　0対1で試合には敗れた。しかし、実松は延長12回、5人の投手を牽引し続けた。「サネ（実松）は、よく守ったと思います」。原監督の試合後の談話が、彼の貢献度を物語っていた。

　第5戦で先発マスクを被ったのは加藤健だった。ポストシーズン初出場が日本シリーズ。しかもスタメン。中には「苦肉の策」と思う人間もいたのかもしれない。

　だが指揮官は、「常に本人たちは準備をしている。私もそれに対して、信頼の中でスターティングメンバーに入れている」と自信をもって加藤を送り出した。

　4回、無死一塁の場面で多田野数人の内角高めのボール球に対し、バントを試みた加藤が極端にのけぞった。

　その行為が、「危険球」と主審にジャッジされる「疑惑の判定」で日本ハムファンから大ブーイングを受ける不利な立場に陥りながらも、先発の内海哲也を好リードで終始もり立てた。打撃でも、5回に2点タイムリー二塁打を放つなど、指揮官の起用に加藤は攻守で応えた。

“捕手が固まればそのチームは10年安泰”説を自ら否定する阿部。

　結果的にふたりは仕事をしたことで、阿部は満身創痍ながらも移動日を挟み3日間、休養することができた。第6戦での高いパフォーマンスは、彼らの存在なくしてありえなかったかもしれない。そのような憶測を立てても決して的外れではないだろう。

　なぜなら、阿部には「捕手が固まればそのチームは10年安泰」といった概念がないからだ。彼は以前、こう言っていた。

「日本ハムを見てくださいよ。鶴岡（慎也）君、大野（奨太）君と、キャッチャーを固定していないけどしっかり勝てているじゃないですか。『レギュラーキャッチャーがいれば安泰』っていう今の野球の概念を覆している。

　もちろん、その考えも正しいかもしれませんけど、一概には言い切れないんですよ。僕が1日でも試合を休むとメディアは極端に心配してくれる。それはありがたいけど、メジャーにしても全試合に出ているキャッチャーなんていないわけだし。だから、『ベンチスタートでもいいじゃない』と、僕は思うんですよ。首脳陣の方たちの方針でそうなっているわけだし、それが、チームが勝つための最善の策かもしれないですからね」

　だからこそ阿部は、自分が出場せずとも控え捕手に試合を託せるのだろう。

　さらに付け加えれば、日本一の要因は控え捕手の存在だけではない、ということ。

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