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もうひとつの“日本代表”?
外国籍J戦士たちのW杯に注目!
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byGetty Images
posted2010/06/12 08:00
南アW杯最終予選の韓国戦でのチョン・テセ
ある街の人々が抱く、自分たちの街のクラブでプレーする選手、あるいはプレーした選手に対する感情は、ときとして他人には想像がつかないほど強いものになる。
例えば、セルティックのホームタウンであるスコットランド・グラスゴーの人々が、日本からの取材に対して、「今回のW杯では中村俊輔と日本を応援するよ」と頬をゆるませながら語る場面。W杯という舞台には、そうした国籍とは無関係のつながりが、そこかしこに隠れている。
鹿島のCBイ・ジョンスはメッシを止められるか?
Jリーグからも、日本代表以外で南アフリカへと旅立った選手が6人いる。韓国のイ・ジョンス、キム・ボギョン。オーストラリアのケネディ、ミリガン。北朝鮮のチョン・テセ、アン・ヨンハ。彼らは、自分が所属するクラブのファン・サポーターたちに、日本の戦いとはまた違った別の楽しみを提供している。これも、昨年から導入されたJのアジア枠がもたらした恩恵と言えるかもしれない。
まずは韓国。鹿島のイ・ジョンスは、センターバックとしての先発がほぼ確実だ。昨年プレーした京都で名を挙げ、3連覇中のチャンピオンチームへと移籍。京都への移籍前は、代表でも確実な地位をつかんでいたわけではなかっただけに、Jでの安定したパフォーマンスがスタメン定着の助けになったとも言える。1対1のコンタクトプレーに強さを発揮するハードマーカーで、果敢にラインをブレイクして人を潰しに行くタイプ。カバーリングに長けたチョ・ヨンヒョンとのコンビはいい補完関係になっている。
グループBに同居するアルゼンチンには、サッカー史上最高レベルの超絶ドリブラー、メッシがいる。彼の変幻自在の仕掛けに、どんな対応を見せてくれるのか。Jリーグのファンとしては、そう考えただけで胸が躍る。
J2大分のキム・ボギョンは、点が欲しい場面でのジョーカー的な起用になりそう。昨年のU-20W杯で8強入りを果たしたチームの主軸で、鋭利なドリブルと左足の強力なシュートが売り。大分でもずば抜けた得点力と打開力を見せており、韓国の次代を担う存在として経験を積んで欲しいところだ。
ケネディはJと世界の距離を計るバロメーター。
続いてオーストラリア。名古屋のケネディは、前線のターゲットマンとして、チームに欠かせない戦術の軸になっている。抜群の跳躍力と194cmの長身を利した、空中に浮いているかのようなヘディングは、Jではそれだけで見る価値があるひとつのスペクタクル。
だが、オーストラリアが入ったグループDには、セルビアのヴィディッチやドイツのメルテザッカーといった世界有数の高さを誇るセンターバックが揃っている。ケネディの高さが、どこまで世界に通用するのか。9シーズンに及んだドイツ・ブンデスリーガ時代にはさほど得点は挙げられなかったケネディだが、Jで見せる圧巻の空中戦には、日本での成長分が含まれているのか。Jと世界との距離を計る意味でも彼のパフォーマンスには注目が集まる。
J2千葉のミリガンは、DF陣のサブの筆頭格。180cmというサイズは平凡だが、千葉で披露している通り、スピードと読みの鋭さは図抜けている。日本と対戦した'05年のU-20W杯では右のサイドバックとしてプレーしたが、先発のチャンスがあるとしたらそのポジションか。