熱パ!クライマックス劇場BACK NUMBER
CSを制した日本ハムの真の強さとは?
セ覇者を脅かす「常勝軍団」の秘密。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/10/22 12:10
クライマックスシリーズ第2戦、ソフトバンク・内川の打球をバックホームしてピンチを救った陽岱鋼。走攻守三拍子そろった活躍で日本ハムの快進撃を支えている。
SHINJOらを擁した「最強外野陣」をも上回る捕殺数。
ライトの糸井も、「身体能力に頼らずミスを減らしたい」と常日頃から守備には細心の注意を払う。
レフトの中田にしてもそうだ。彼の場合、今季は外野手一の貢献者と言えるだろう。球団記録に並んだ19補殺。数字もさることながら、守備への意識の高さは目を見張るものがあった。
19個目の補殺は9月22日の西武戦で、二塁走者のオーバーランを刺したもの。このプレーについて中田は、「ランナーを見たら飛び出していたから」と淡々と振り返る。
本塁での補殺なら、肩の強さやポジショニングでカバーできるかもしれない。だが、ベースから飛び出した走者を刺すためには、相手の隙を瞬時に突ける集中力と的確な判断力が求められる。中田は、それがあったからこそ、これほどまでの補殺を記録できたのだ。
3人合わせた補殺数は31。これは日本一となった2006年、「最強外野陣」と謳われたSHINJO(新庄剛志)、森本稀哲、稲葉篤紀による20を大きく上回る。これだけでも、今季の日本ハム外野陣の守備がどれだけ優れていたかが窺えるだろう。
中田や稲葉の走塁に見えた、「常勝軍団」日ハムを象徴するプレー。
走塁にしても、守備と同じくらい日本ハムにとって勝利への大事な要素となっている。
それがはっきりと表れていたのが、第3戦だった。
日本ハム3点リードで迎えた6回の無死一、三塁のチャンス。6番・小谷野栄一のセカンドゴロで、三塁走者の中田が三本間に挟まれてしまう。アウトは必至。だが、中田はすぐにタッチされようとしない。自重し、三塁ベースへゆっくりと戻りながら、チラチラと走者を確認している。
中田は、一塁走者と打者走者が先の塁に進むまでの時間を稼いでいたのだ。
この彼の“見えないプレー”が、稲葉の走塁へと繋がっていく。
1死二、三塁でホフパワーがファーストゴロに倒れ、三塁走者の稲葉は三本間で立ち止まる。ボールを持って追いかけるファーストの小久保裕紀が送球体勢に入った瞬間、稲葉は三塁ベースに戻りながらサードの松田のグラブの位置を確認し、送球の軌道上に体を入れる。狙い通り、ボールは稲葉の背中に当たりレフトファウルゾーンへ転がっていった。
貴重な追加点。稲葉は、「フェアなプレーではないかもしれないけど、それだけ大きな1点だった」と、この一連のプレーの重要性を説く。そして、こうも付け加えた。
「18年やって初めて、今日(練習の成果が)生きた」
1年どころか、18年に1回のプレーが大一番で出せる。この意識こそ、日本ハムが、わずか10年足らずで「常勝軍団」に変貌を遂げることができた大きな要素でもあるのだ。
これこそが、「常勝軍団」となった日本ハムを象徴するプレーでもあった。