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成功と言える1年目だが不安材料も。
ダルビッシュが克服すべき課題とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2012/10/14 08:02
今季最後の試合となったワイルドカードゲームで、ワシントン監督から交代を言い渡されるダルビッシュ。
「マラソンを走れと言われて走って、30キロ地点で『さあスパート』というところで止められたみたいな感じ」
絶妙な表現である。
メジャーリーグでの1年目のシーズンを終えたダルビッシュの言葉である。
「終わったという実感もない。明日? こんなに早く終わるとは思っていなかったんで何をすればいいんでしょう」
ワールドシリーズ優勝を狙っていたレンジャーズにとっては納得のいかないシーズンだっただろうが、それでもルーキーのダルビッシュにとっては、16勝をあげ、1試合だけのワイルドカード決戦を任されたのだから、大成功のシーズンだったといえるだろう。
ダルビッシュは「3年目のジンクス」を乗り越えるか?
ダルビッシュほど、素質に恵まれている投手はそうそう出現しないから、メジャーリーグで長いキャリアを積んで欲しいのだが、日本人投手の場合、1年目の結果はそれほどキャリア全体に反映しない。
「3年目のジンクス」があるからだ。
日本人投手は野茂英雄のデビュー以来、1年目に華々しい活躍するケースが目立つ。石井一久、そして松坂大輔も1年目でワールドシリーズ優勝に大きく貢献した。
ところが3年目からやや陰りが見え始める選手と、成績を伸ばす選手に分かれてくる。そこが「キャリアの分かれ道」なのだ。
現在、メジャーリーグで活躍するふたりの投手を例にとってみよう。
投手 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | |
黒田博樹 | 勝敗 | 9勝10敗 | 8勝7敗 | 11勝13敗 |
ERA | 3.73 | 3.76 | 3.39 | |
投球回数 | 183.1 | 117.1 | 196.1 | |
三振/9 | 5.70 | 6.68 | 7.29 | |
四球/9 | 2.06 | 1.84 | 2.20 | |
松坂大輔 | 勝敗 | 15勝12敗 | 18勝3敗 | 4勝6敗 |
ERA | 4.40 | 2.90 | 5.76 | |
投球回数 | 204.2 | 167.2 | 59.1 | |
三振/9 | 8.84 | 8.27 | 8.20 | |
四球/9 | 3.52 | 5.05 | 4.55 | |
ダルビッシュ有 | 勝敗 | 16勝9敗 | ? | |
ERA | 3.90 | ? | ||
投球回数 | 191.1 | ? | ||
三振/9 | 10.40 | ? | ||
四球/9 | 4.19 | ? |
ヤンキースで活躍する黒田博樹は3年目に浮上のきっかけを得た。
反対に松坂大輔は華々しいデビューを飾りながらも3年目に大きく成績を落とした。