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横浜のエースに返り咲いた三浦大輔。
苦悩の日々を救った、妻のひと言とは。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/10/04 11:50

横浜のエースに返り咲いた三浦大輔。苦悩の日々を救った、妻のひと言とは。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

2005年以来の150球越えとなった9月25日の対中日戦。「1つでも勝つのは大変なことなんです。次、頑張ります」と語った三浦。

「引退」を考えていた三浦を甦らせた、妻のひと言。

 失意は彼の精神を弱らせた。

「引き際って、こんな感じなのかな?」

 まだやれると自分に強く言い聞かせたとしても結果は伴わず、二軍暮らしを余儀なくされる現実は変わらない。ただ、「引き際」の三文字が頭の中をかすめたところで引退する自分の姿が想像できない。

 そんな苦悶の日々を救ってくれたのが、妻のひと言だった。

「三浦大輔がこのまま終わっていいの?」

復活へ向け……辿り着いたひとつの答え。

 終われるはずがない。三浦は妻の言葉で目が覚めた。今の自分に足りないものを二軍監督や投手、トレーニング両コーチとともに模索する。

 そこで「瞬発力」というひとつの答えにたどり着いた。

 毎日のランニングなどスタミナ強化の練習は欠かしていないため、持久力に凋落は見られない。だが、瞬発系の筋肉を鍛えるトレーニングは重点的に行なっていなかった。そのため、年齢とともにそこが衰えてきていたのだ。

 30メートル、60メートルといった短距離走において、通常のダッシュだけでなく体幹を意識したジグザグ走も取り入れるなど、様々なメニューをこなすアジリティの強化は、三浦の体にキレを取り戻させてくれた。

 パフォーマンスにおいても、その成果は顕著に表われた。

 7月に一軍復帰を果たすと、後半戦だけで5勝。チーム唯一の完封を演じるなど、本来の三浦の姿を周囲に印象付けた。

 そして今季、彼はエースの座に返り咲く。

 5月12日の阪神戦では相手打線を8回まで無安打に抑えるという、あわやノーヒットノーランの快投。7月4日には、7年間勝てていなかった巨人から白星を挙げ通算150勝もマークした。

【次ページ】 「2ケタ勝利よりも、チームの勝利に貢献したい」

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