フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
全英女子ゴルフに赤鬼が出現!?
宮里藍と原が語るアジア人の強さ。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAction Images/AFLO
posted2012/09/28 10:30
2日目の12番ホールで、グリーン上の原江里菜のマーカーから、ボールが風で動いたのが確認され、試合は中断、後に中止となった。この日すでに始まっていたラウンドのスコアは無効になるという異例の事態になった。
“赤鬼”の2人はオフィシャルの判断に座り込みで抗議。
この日は朝から強烈な風が吹いていた。追い風を受ければ突き飛ばされたようにつんのめり、向かい風が吹けば水中を歩くような抵抗を感じるほどだった。
カーとペテルセンはスタート前から不満たらたらである。
「こんな風で本当にスタートする気なの?」
彼女たちは朝イチのスタートだった。トップの組が進まなければ競技そのものが進まない。主張が認められずに渋々といった様子で10番ホールから出ていったのだが、2人の堪忍袋の緒はあっという間に切れた。
海沿いにあるインコースでも一番海に近い12番グリーン。ここでカーのパットは風に押し戻され、ペテルセンのパットも風を受けて急激に曲がった。
「こんなのおかしい! もうプレーしない!」
2人はそこで勝手にプレーを中断。パターを投げ捨て、カーはものすごい剣幕で競技委員に抗議をし始めた。“Fワード”も連発である。ペテルセンはキャディーバッグの上にどかんと腰を下ろし、薄ら笑いを浮かべて座り込んでしまった。
トップの組が止まっていれば、後続はどんどん詰まっていく。だが、そんなことはお構いなしに抗議は続く。カーは顔を真っ赤にして怒っている。
その場にいた原は唖然とし、そしてキャディーとささやき合った。
「……赤鬼」
激烈なクレームに原はカルチャーショックを受けた。
確かにクラブは「金棒」。烈火のごとく怒るさまが「鬼」に見えても間違いではない。原は言った。
「私は初めての出場だから、この風の中でもプレーしなきゃいけないのが全英だと思ってました。それにしたって2人の文句の言い方にはビックリ。衝撃的でした。あんなに競技委員に文句を言ってもいいなんて。日本じゃ絶対にあんなに強く言えないですよ」
カーは「グリーンでボールは動くし、ティーアップしたボールは落ちるし」と訴えたが、原によればティーアップしたボールが風で落ちた事実はなかったという。パワーを生かした高いボールで上から点で攻めていく2人のスタイルは、アメリカ的なコースにマッチする。弾道を低く抑えて線で攻めていくリンクスには不向きだ。
強風の中ではますます自分たちが不利になる。そんな思惑も働いていたかもしれない。