欧州サムライ戦記BACK NUMBER
清武と宇佐美の初ゴールに共通点。
「個」への意識が2人の前途を照らす!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAP/AFLO
posted2012/09/19 12:20
ブンデスリーガ第3節のボルシアMG戦。一度は体勢を崩しながらも、素早く立て直して決勝ゴールを叩き込んだ清武。この試合、ブンデスリーガ初ゴールに加えて、FKとCKから2アシストを記録。敵将のファブレ監督も「マンマ・ミーア(なんてこった)!」と脱帽するしかなかった。
先週末のブンデスリーガで、目覚ましい活躍を見せた日本人たちがいた。
彼ら自身も、彼らが担う日本サッカーも、正しい方向に進んでいるのではないかと感じさせるような活躍を見せた。ロンドン五輪を戦った2人のMFは、将来の日本代表にどんなものをもたらしてくれるのか。想像してみるだけで期待は膨らんでいく。
清武の活躍に、ドイツメディアは大絶賛の嵐。
まずは土曜日、ニュルンベルクに所属する清武弘嗣だ。昨季4位に入ったボルシアMGとのアウェイゲームで、いつも通りにトップ下としてスタメンに名を連ねると、フリーキックとコーナーキックから合計2つのアシストをマーク。そして、後半10分にはバリッシュからのパスを受けて、一度はボールを奪われそうになりながらも、強引に前に運び、自身ブンデス初ゴールとなる決勝点を決めた。
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「ああいうシーンでは相手が足を出してくるってわかっていたので、股を狙うか、横を狙うかっていう感じで打ったらうまく入って良かったです」
試合後には淡々と振り返ったが、格上を相手に1ゴール、2アシストの活躍を見せたことで、徐々に高まっていた清武への評価は爆発した。ヴェルト紙日曜版がリーグ内の全選手の中で最高の評価をした上に、ビルト紙もベストイレブンに選出。極めつけはキッカー誌で、全選手の中から1人選ばれる今節のMVP、マン・オブ・ザ・マッチ、さらにベストイレブンに清武を選んだのだ。香川真司との比較もされているが、ヒロシ・キヨタケの名前がドイツ全土に知れ渡るのも時間の問題だろう。
劣勢の中、チーム最多となる3本のシュートを放った意味。
3節を終えてチームの全得点に絡んでいる清武だが、満足する素振りは見せなかった。
「ゴールという結果もまだ残してないですし、もっと、もっと、貪欲に行ければいいなと思います」
そう話していた矢先の、決勝ゴールだった。
ニュルンベルクは決して、攻撃力のあるチームではない。4-2-3-1の1トップはチェコ代表のペクハルトとドイツU-21代表のポルターが交互に務めているが、どちらもフォワードとして決定的な仕事が出来ているわけではない。となると、数少ないセットプレーをものにするか、チームの中でゴールから2番目に近い位置にいる清武がゴールを決めていかなければ、苦しくなる。だからこそ、セットプレーから2つのアシストを記録し、自らゴールを決めたボルシアMG戦の活躍には大きな意味があるのだ。実際、この試合では劣勢の中、チーム最多となる3本のシュートを放っている。ゴールを決めようとする意志がなければ、歓喜の瞬間は訪れなかったはずだ。