プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“ポゼッション”志向は危険な賭けか?
新監督就任でリバプールが変わる!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/08/31 10:31
第2節マンチェスターCをホームに迎えた試合で、2-1とリードしていた終盤、DFシュクルテルのパスミスから同点に追いつかれた。ロジャーズ監督は「ボールをつなごうとする選手の方がいいんだ」と失態を擁護した。
同じ4-2-3-1でも、より攻撃的なシステムを採用。
システムは、ロジャーズが古巣でも好んだ4-2-3-1。3代前のラファエル・ベニテス監督時代から採用歴のある陣形だが、後方の「4+2」による堅守に重きが置かれていた以前とは違い、ラインを上げ、前方の「3+1」を両SBを含む後方から援護することを意識した、攻撃的なシステムとなっていた。立ち上がりは良かっただけに、1トップのスアレスが、ミドルをGKにセーブされ、至近距離からのヘディングを外すなどして、先制できなかった点が悔やまれる。
失点の中にも、前向きに考えられる部分はあった。2点目のPKは、自軍ゴール前から右に開いてビルドアップを開始しようとした所で、マルティン・シュクルテルが、ボールを競った相手FWにファウルを犯して奪われている。昨季までなら、退場したダニエル・アッガーに代わってCBコンビを組んでいたキャラガーが、大きく蹴り出すことを指示していたに違いない。後方からの組み立てに取り組んでいる証拠であり、時間が解決してくれる類いのミスだ。
「ポゼッション能力はスペイン人なみ」の新戦力、J・アレンの活躍。
期待の新戦力も及第点以上の出来を示した。22歳で開幕前週に加入したばかりながら、中盤の底で的確にボールを捌く、ジョー・アレンの姿が目を引いた。ロジャーズは、スウォンジーのサッカーをコントロールしていた“メトロノーム”引き抜きに、推定補強予算2000万ポンド(約25億円)の75%を費やしている。翌週には、ヌリ・シャヒンのレンタル移籍も決まったが、指揮官が「英国人だがポゼッション能力はスペイン人なみ」と絶賛するアレンには、レアル・マドリーから1年間拝借する「23歳にして熟練のテクニシャン」との競争ではなく、共存が図られるだろう。
チームがポゼッションサッカーを身につければ、スアレスの得点王も!?
トップ下に入ったジェラードが静かだったことや、その脇で、新FWのファビオ・ボリーニがクレバーな持ち味を発揮し切れずにいたことを考えれば、リバプールでは、4-3-3システムを基本とする方が良いのかもしれない。前を向きたがるジェラードを、中盤3名のうち、アレンとシャヒンのパスに呼応する最も攻撃的なセンターハーフとして使い、ボリーニは、3トップのサイドから、より近距離でスアレスと絡む。スアレスは、昨冬の移籍から昨季末までの1年半で合計21得点を上げている。
リバプールが、ボールを支配して攻めるスタイルを身につければ、チェンス増加でリーグ得点王争いも期待できる。チームのサッカーそのものも、個のスケールでスウォンジーを上回る分、ロジャーズの古巣よりもダイナミックなパスサッカーが実現されるはずだ。