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西武を演説で奮起させたC・カーター。
熱パに轟く“文武両道”助っ人の咆哮。
text by
加藤弘士Hiroshi Kato
photograph byKyodo News
posted2012/08/30 13:10
米国屈指の名門・スタンフォード大学を3年で卒業した超インテリ助っ人外国人、クリス・カーター。熱き闘志と並はずれた頭脳で好調レオ軍団を支える。
「ほっともっと!」というかけ声とともにダッシュに臨む。
6月23日、ファームで結果を積み重ね、カーターは一軍に昇格した。試合中、ベンチから闘争心むき出しで出番をうかがう表情と理知的な素顔とのギャップは、すぐさまライオンズファンの注目を浴び、愛される存在になっていった。
報道陣には「トゥース!」「オツカレチャン!」と笑顔で語りかけ、練習前のアップでは「ほっともっと!」という謎のかけ声とともに、ダッシュに臨む。ペットボトルの緑茶と、レッドブルをゴクゴク飲み干し、ハイテンションでグラウンドへと走っていく。
8月28日、ゲーム差無しで迎えた札幌ドームでの日本ハム・西武による直接対決の首位攻防戦。6回には代打・高山がダメ押しの今季1号3ランを放ち、レオ軍団が第1ラウンドを制した。ベンチには自分のことのように喜ぶ、カーターの姿があった。
もう一度、高山に聞いてみた。カーターって現在のライオンズで、どんな存在ですか?
「今のチームにとって、なくてはならない存在ですよ。ムードメーカーですからね」
文武両道を地で行く青い目のサムライが、熱パをさらに熱くする?
昇格から2カ月が経過した。8月28日現在、打率3割。得点圏打率は4割。スタメンは保証されていないが、勝利打点は中島裕之と同じ3をマークしている。そして記録以上に、その雄姿は鮮やかな記憶として刻まれていく。
日本に来て、良かったかな? そんなわたしの問いにカーターは力を込めて、こう答えてくれた。
「素晴らしい選手、監督、コーチに囲まれて野球をやっている。今はただ、ライオンズファンの声援に応えたい。打席で100%の姿勢を見せて、ファンの皆さんに喜んでもらえるプレーをしていきたい。そうやって、恩返しをしていきたいんです」
夏の終わり。吹き抜ける風に、秋の気配を感じる。それでもこの男の闘争心は、さらに熱さを増すばかりだ。文武両道を地で行く、青い目のサムライ。熱パのジャングルに、きょうもカーターの咆哮が響き渡っている。