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西武を演説で奮起させたC・カーター。
熱パに轟く“文武両道”助っ人の咆哮。 

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加藤弘士

加藤弘士Hiroshi Kato

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photograph byKyodo News

posted2012/08/30 13:10

西武を演説で奮起させたC・カーター。熱パに轟く“文武両道”助っ人の咆哮。<Number Web> photograph by Kyodo News

米国屈指の名門・スタンフォード大学を3年で卒業した超インテリ助っ人外国人、クリス・カーター。熱き闘志と並はずれた頭脳で好調レオ軍団を支える。

日本での活躍を毎試合、ネットでチェックする父親。

 野球に熱中する一方、名門・スタンフォード大に進学後は人間生物学を専攻し、細胞の研究に明け暮れた。「野球選手になりたい」というクリスを後押ししてくれたのは、他ならぬ父だったと話す。

「父は日本で野球をすることにも、すごく喜んでくれています。毎試合、インターネットで僕の活躍をチェックしているんですよ」

 '04年のドラフト17巡目でダイヤモンドバックスに入団。'07年にはレッドソックスに移籍し、'08年にメジャーデビュー。メッツに移籍した'10年には、自身最多の100試合に出場した。そして今年、新たな戦いの場を求め、カーターは海を渡った。

 異国でのチャレンジは、順風満帆なスタートではなかった。3月上旬のオープン戦では走塁中、右膝を痛めた。中旬には都内の病院で右膝遊離体除去手術を受けた。開幕からずっと、二軍の日々が続いた。初めて見る日本の桜は、もの哀しい風景に映ったことだろう。

「タカヤマさんとの出会いは本当に大きかった」

 右も左も分からぬ中、折れそうになる心。救ってくれたのは、二軍でロッカーが隣の高山久だった。

 高山は言う。

「カーターって、猫背なんですよね。だから余計、落ち込んでいるように見えて。自分、英語はできないんですけど、毎朝あいさつしたり、話しかけるようにしたんです。自分は1歳年上なんですけど、『キューさん』『センパイ』とか言ってくるようになって」

 エミネムやジャスティン・ビーバーなどの音楽を流しながら、一緒にトレーニングに励んだ。いつか西武ドームのレフトスタンドを、ふたりで沸かせる日を夢見て――。

 高山の気配りには、カーターも感謝を口にする。

「春先、ファームでの日々は苦しい時期でしたが、タカヤマさんとの出会いは本当に大きかった。今でも仲のいい友達です。逆に言えば、自分がさらにいい野球選手になる土台を作れたとも思うんです。今になってみると、とても良い期間だったとも言えるんじゃないでしょうか」

【次ページ】 「ほっともっと!」というかけ声とともにダッシュに臨む。

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