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F1の来季シート争いがヒートアップ!
可夢偉とマッサの“オプション”に注目。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/08/26 08:01
今季、全20戦中11戦を戦った小林可夢偉。ドライバーズポイントでは、過去最高となる33ポイントをすでに獲得しているのだが、チームメイトのペレスの表彰台などで、なかなか評価が定まらない状態ともいえる。
マネージャーの“七光り”を排除する絶好のチャンス!?
それを端的に表しているのが、マッサの契約金だ。その額は推定12億円。これはセバスチャン・ベッテルやキミ・ライコネンと比肩する数字で、チャンピオンを獲得していないドライバーとしては、群を抜いている。なぜ、マッサがこれほどまでに高額なサラリーを手にできるのか。
それはマッサのマネージャーを務めているニコラ・トッドが、元フェラーリ代表で現在FIA会長を務めるジャン・トッドの息子であるからと指摘する者は少なくない。
すでにジャン・トッドがチームを退任していた2010年に、フェラーリはオプション契約を白紙することもできたが、ドイツGPで発生したいわゆる“チームオーダー事件”によって、手負いのマッサをオプション契約を行使して守る必要があった。あれから、2年が経過。ついにフェラーリはマッサとの高額な契約を破棄することに成功したのである。
もし、マッサがフェラーリに残留したければ、今後はフェラーリ側が要求する金額を呑むしかないのである。
契約最終年の可夢偉はプールサイドで来季を構想!?
オプション契約はチームにとってだけでなく、時にはドライバーにとっても有り難くない存在となることがある。
それはチームがオプションを行使する権利を持っていた場合、ドライバーが移籍したくとも、チームが行使すれば、ドライバーは契約上、従わざるを得ないからだ。しかも、やっかいなのは、チームが行使するかどうかは期限までわからず、その間、他チームとの交渉を行えないのである。
2012年、ザウバーに残留した小林可夢偉も、昨年ザウバーからオブション権を行使されたひとりである。可夢偉とザウバーとの契約は2年プラス1年オプションだったと言われ、それが真実だとすると、今年は最後の年。
つまり、可夢偉はザウバーの意思とは関係なく、この夏は自由に交渉が行えるのである。
オプションを行使されなかったマッサと、そもそもチームにオプション権を握られていない可夢偉。契約面で似たような状況にあるこの2人が、どのようなプールサイドリーグを過ごすのか。後半戦のタイトル争いだけでなく、2013年へ向けたシート争いも熱気を帯びてきた。