野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭を倒した大金星よ再び!
天理が生まれ変わって、運命の対決。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/19 19:00
センバツでは腰を骨折し、2カ月以上の治療を経て復活した天理のエース中谷佳太(右)。帽子のつばの裏に3年生部員全員の名前を記して、力投を続ける。
センバツで敗退した直後、走塁を徹底的に見直した天理。
天理の成長を感じるのは、その走力だ。
ランナーコーチを務める隈元周が手ごたえを口にする。
「センバツで健大高崎に敗れた時に、なんであんな負け方したのかなってみんなで話し合った。健大高崎は、“投手のワンバウンドの球はスタートを切る”とか、いろいろかき回してきた。すごい恥ずかしい負けだったんですけど、あの試合を経験して、あんな走塁をせなあかんよなって話になって。県内では智弁学園が強くて、智弁に勝つにはちゃんと走塁をやらないと勝てないってみんなで言いあいました。僕はその時はレギュラーで、今はランナーコーチやってるんですけど、二塁からヒット一本で生還できる走塁とかを練習試合からずっと心がけてきました。それまでは打つだけの野球でしたけど、投手と打者の1対1の勝負じゃなくて、2対1の勝負を作れていると思います」
今大会2回戦の鳥取城北戦では2回裏の2死満塁の好機から、3連続シングルヒットで、二塁走者が全て生還した。6番・木村秀は打者のバットに当たってからホームに生還するまでが6秒39という驚異的な数字を計測。通常、二塁から走者が生還する場合、7秒を切らないと確実にアウトになる。守備の上手いチームでも6秒8を切るのがせいぜいなので、木村の走塁がいかに速かったか、想像できるだろう。
すべては昨秋の大阪桐蔭戦での勝利から始まった……。
3回戦の浦和学院戦では、2回裏の2死一塁から、1番の早田宏規が右中間を破ると、一走の船曳翔が長駆ホームイン。次打者の東原匡志は三塁手を強襲する適時打を放ったが、この時も、東原はしっかりと二塁へ進んでいた。
打力&走力。
センバツの時とは違うスタイルで、天理はここまで押しあがってきた。
ただ、全ての始まりは昨秋の大阪桐蔭戦の勝利があったからだと、橋本監督は力説する。
「あの試合で勝ったから自信になったというのもありますが、あの勝利でセンバツの切符をもらいましたからね。それで、センバツに来て、いいところなく負けたけど、大舞台の経験があって、チームが反省して強くなった。今につながっているのも、大阪桐蔭に勝ったから」
大阪桐蔭からの金星、センバツでの屈辱、そしてまた、準々決勝での大阪桐蔭との対決。
運命的ではないか。