「重要なのは、自信を持って、いかに初戦に臨めるか」

　5月24日、壮行試合となった日韓戦、ボランチとして出場した遠藤は中盤が間延びする中、なんとかボールを繋いでリズムを作ろうと奮闘したが、ままならなかった。

「もっとお互いの距離を詰めてパスを回し、ダイレクトとか使うべきだった。ちょっと距離が遠かった」

　後半34分、攻撃の糸口を掴めぬままピッチを後にした。

「ここまでいろいろあったし、いろいろ言われたけど気にしてない。この試合もW杯に向けてのテスト。思ったことはできなかったけど、何が出来て、出来なかったか。その確認が出来たわけだし、もちろん課題も見つかった。それが親善試合なんだから、それをこれから克服していけばいい。合宿はそのためにあるんだし、海外に行けば気持ちも切り替わるでしょ。そこで、また1日1日しっかり練習するしかない。そうして俺は、カメルーン戦の時は、もうすべてやり尽くしたという気持ちでピッチに立ちたい。もう、ドイツのような大会にはしたくないんでね」

　遠藤は、いつものように淡々と話をした。

　ショッキングな負けで、他選手が虚ろな表情で敗戦を語る中、堂々としていられるのは、W杯本番まで自分のすべきことが明確に見えているからだろう。それをやり終えた先に自信がついてくることも知っている。

「最後に重要なのは、それ（自信）を持って、いかに初戦に臨めるか、だからね」

　岡田監督が進退伺いを出すなど日本代表の今後が不安視される中、遠藤は力強くそう言い切って、バスの中に乗り込んでいった。