黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
日韓戦の敗北にも気持ちはブレない。
遠藤保仁はドイツW杯直前を思い出す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/05/26 10:30
遠藤にとってのドイツW杯の想い出は他の選手とまったく異なる。遠藤はフィールドプレーヤー(GK以外の選手)で、大会期間中を通して唯一試合に出られなかった選手だからである
怪我の治療で休養できたことは不幸中の幸いだった。
遠藤にとって、この時期の離脱はある意味、救いになったのかもしれない。
今シ-ズンは、1月1日の天皇杯優勝後、代表合宿の合流まで3週間しか休みがなかった。2009年シ-ズンの疲労を取る間もなく、体を動かし始めたのは、代表合宿の2日前。例年、行なっていた体作りのキャンプはできなかった。そのため、「代表の合宿で体作りをしながら調整するしかない」と、出遅れも覚悟して代表合宿に合流した。
しかし、コンディションの差は他選手と歴然だった。2月の東アジア選手権は、なんとなくやれていたが、試合が重なってくると体作りが出来なかったツケが回り、徐々に動けなくなっていった。疲労の蓄積と体作りの遅れが負の連鎖を生み、遠藤の精度のあるプレ-を狂わせていった。
筋膜炎でチームを離れている間、代表のW杯メンバー選出に関する報道が増えてきたが、「焦っても仕方ないんで、まずは完全に治します」と、治療に専念。疲れていた体を休めることができたのである。
Jリーグ中断前の最終戦で取り戻した本来の遠藤らしさ。
4月24日、FC東京戦で途中出場を果たし、1アシストを決めるなど復調をアピール。5月1日の鹿島戦では、スタメン出場を果たした。だが、いつものプレーを取り戻すところまでには至らなかった。西野監督も「まだまだ、ヤット本来の動きではない」と、エースの不出来に渋い表情を見せた。
ようやく、“らしさ”を見せたのは、5月16日、W杯のためにリーグ戦中断前の最後の試合になった湘南戦だった。ガンバは3-1で勝利し、遠藤も1アシストするなど、攻守にキレを取り戻した。
「勝ってW杯に入れたのは良かったけど、俺自身の調子はまぁまぁかな。これから代表の合宿に入って、徐々にコンディションを上げていくよ。特にイングランド戦とかコートジボワール戦までにとかは考えていない。親善試合にピークに持っていってもしゃーないからね。ドイツの時のように、いい試合しても本番で勝てないと意味がない。目標は、あくまでもカメルーン戦なんで」
遠藤は自信タップリな表情で、そう言った。この日、観戦に来ていた兄・彰弘も「ヤットの調子はまだまだだけど、心配はしていない。これからグッと上げていける。本番ではいろんな想いがあるだろうから、必ずやってくれますよ」と、日本のエ-スになった弟に全幅の信頼を寄せていた。