なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
“ふだん通り”に戦ってカナダを撃破。
澤の復活で、なでしこが見せた実力。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2012/07/26 12:50
前半33分、大野→澤→大野とつなぎ、大野のトリッキーなパスを受けた川澄が角度の無いところから決めた先制点。巧みなコンビネーションから生まれた、なでしこらしい1点だった。
なでしこジャパンのロンドン五輪第1戦。
7月17日にブラジルと親善試合を行い、1-2で敗れているカナダは、その試合から3人を入れ替えてこの試合に臨んできた。
GKがマクロードとなり、右DFにウィルキンソンを入れ、ブラジル戦で右DFだったセッセルマンを左に回した。そして左MFをカイルに替えたのである。
日本の左サイドからの攻撃(ひょっとするとカナダは、宮間あやが左MFだと踏んでいたのかもしれない)を警戒して守備の強いウィルキンソンに応対させ、DFラインからの攻め上がりは、もっぱら左のセッセルマンが担当する。そしてダイヤモンド型の中盤は、シュミット以外の3人が汗かき役として日本のサイドMFと前線にプレスをかけまくり、トップ下のシュミットは澤穂希、阪口夢穂という日本の両ボランチをケアしつつ、前線のシンクレアとタンクレディにボールを供給する――ハードマン監督が描いていたゲームプランがこのようなものであったことは、メンバーや布陣、そして実際の戦いぶりを見ても明らかだ。
が、カナダの策略は完全に裏目に出てしまう。
日本が最も恐れていたエースのシンクレアも前線で孤立。
まず、ウィルキンソンがオーバーラップを自重し低めのポジションを取ったことで、逆に自陣に(結果的にこの日は宮間に勝るとも劣らないアタックを披露した)川澄奈穂美や、鮫島彩を引き込むことになってしまった。後ろからどんどん人が追い越してくるなでしこのアタックをまともに受ける形になり、カナダの右サイドはおあつらえ向きの突破口と化したのだ。
そしてシュミット1人で澤、阪口というなでしこきっての技巧派を封じるなど、到底無理な話。反対に日本は2人のボランチで敵のトップ下1人を見ればいいわけだから、前線へのボールの出どころを苦もなく潰せた。
となれば、日本が最も恐れていたエースのシンクレアは、前線で孤立し続けるしかない。なにしろカナダは、FWのシンクレアとタンクレディ、トップ下のシュミット、そして時折上がってくる左DFセッセルマンの、わずか3~4人しか攻撃にかけていないのだから。
一方、なでしこは右MFに宮間、左MFに川澄、FWの一角に大野忍と、従来の選手配置に多少手を加えたものの普段通りのスタイルで戦い、実力のほどを見せつけた。
中でも際立っていたのは、やはり澤と大野だ。