詳説日本野球研究BACK NUMBER
“剛”の澤村拓一vs.“柔”の東浜巨。
東都が誇るエース対決の行方。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/05/23 08:00
東都大学野球第6週最終日、亜大の東浜は6度も得点圏に走者を許しながらも頭脳的な投球で要所を締めて中大を完封
調子が悪くとも試合を作る、恐るべき大学2年生・東浜。
以上の10試合は、どれをとっても単独で紹介したい好試合だが、最も注目したのは亜細亜大・東浜と中央大・澤村の投手戦である。
5/12は澤村がこれまでで最高と言っても過言ではないピッチングを展開して亜大を3安打、1失点に抑え込んだ。低目が伸び、右・左打者の内角に、腕を振って渾身のストレートを投げ込む。さらに一塁に走者を出せば電光石火のけん制球で殺し(1回青柳匠を)、クイックは1.10~1.20秒と一定の速さを保ち、変化球はキレ味抜群の縦・横2種類のスライダーを主体にコントロールよく四隅を突き、まったくスキを見せなかった。
かたや東浜は投球の半分以上をツーシームで占めながら、4回の井上晴哉の三塁ゴロでこの日3本目のバット折りを達成。低目ぎりぎりのストライクゾーンからボールゾーンに落とす絶妙の制球力でツーシームを操り、24アウトのうちゴロアウトは10個を数えた。
次の対戦となった5/14だけを見れば、東浜の調子はよくなかった。投げ急ぎが目立ち、直・曲球が高めに抜けていたのだ。始動から、投げたボールが捕手のミットに届くまでの時間が東浜の場合は調子の善し悪しを計るバロメータになる。14日はその時間が明らかに速かった。ほとんど1.8~1.9秒で推移し、直・曲球は明らかに高めに抜けていた。
中盤以降も制球力は定まらず、5~8回には得点圏に走者を許す苦しい展開を強いられたが、東浜はツーシームを主体にピンチを切り抜け得点を許さない。反撃が期待された9回裏、中大は三者凡退で攻撃を終え、あっけなく試合の幕を下ろしてしまう。それまでのチャンスをことごとく潰されたことにより中大の精神力は完全に疲弊しきっていたように見えた。そういう精神状態に導いたのが万全の調子ではなかった敵の2年生投手だったことに、マスコミも野球ファンも、単純にもっと驚いていい。