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<金メダルへの試行錯誤> 入江陵介 「“優等生”の殻をやぶれ」
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byTadashi Shirasawa
posted2012/07/20 06:02
なぜ“最初の100mの結果が必要”なのか?
入江はロンドンに向けてさらに自分に磨きをかけようと思っている。
「五輪では200mで思い切った勝負をするためにも最初の100mの結果が必要ですね。そこでメダルを獲れなかったら、200mではアンパイで行っちゃう自分がまだいると思うし。100mはトップのラクール(フランス)とも0秒2差だから、まずは100mでしっかり結果を残す。金メダルを獲らないと日本競泳チームのエースとは認められないし、憧れでありすごく尊敬するロクテ選手とも思い切り戦いたいですから」
入江はロンドン五輪が自分の競技人生の終着点だとは思っていない。
そこで新生・入江陵介の姿を世界に、そして日本に見せない限り、もう一段上の世界へは進めないとも考えているのだ。
「記録の面では、やっぱり高速水着で出した記録は意識しますね。超えない限り、それはずっとつきまとってくるものだし。そこは自分との戦いだけど、もし超えられれば世界の頂点も近づいてきて、本当の意味で自分の殻を破れたことになるはず。厳しいハードルではあるけどそれがロンドンで出来たら最高だし、そこからの4年間は、また違った景色の中で戦えるようになると思うんです」
優等生の殻を破り、ライバルに勝ち、そして真の意味での日本のエースへ。
冷静な表情で語る入江は、ロンドンへ向け、心の中で静かに炎を燃え上がらせている。