セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
バブルに沸く中国超級リーグで、
再び情熱を取り戻した名将リッピ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/06/14 10:31
中国超級リーグ第11節、広州恒大は青島中能に1-0で勝利。就任初戦を飾ったリッピは観客に向かって喜びを表した。
“このサッカー未開の地を開拓するパイオニアは自分だ”
確かに10億円の年俸は魅力的だろう。しかし、金も名誉もすでに十分得ているはずの64歳が、宝の山を前にした目をしているのはどういうわけか。
「中国では仕事の進め方がスローペースだから、最初に覚えた広東語は『快(速く)!』だったよ」と快活に語る今のリッピは、随分若返ったように見える。高温多湿で知られる広東地方独特の蒸し暑さに閉口しながらも、「熱烈な応援をしてくれるサポーターへの礼儀だよ。二番目に覚えた言葉は『謝謝』だ」と試合中は礼を重んじてジャケットを手放さない。
名将を駆り立てているのは、“伝統国からやってきて、このサッカー未開の地を開拓するパイオニアは自分だ”という強烈な自負心だろう。
中国からのコピー商品流入に頭を悩ませるイタリアだが、広州にたどり着いた銀髪の指揮官は、紛うことなき一級品のオリジナルだ。