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「考える投手」とはどういうことか?
楽天の新人・釜田佳直が伸びる理由。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/06/06 12:05
6月3日の広島戦。4回二死満塁の場面で打撃好調の堂林翔太を三振に仕留めた釜田佳直。18歳のルーキーは、今季2勝目を挙げた。
釜田佳直は悩んでいた。
もともとプロ指向の強い選手だったが、去年の秋、プロ入りを断念しかけた時期があった。
というのも、昨夏の甲子園の優勝投手である日大三高の吉永健太朗が、早大へ進学することになっていたからである。
「いちばんいいピッチャーが大学へ行くと言ってるのに、吉永の上をいってない自分が、大学より上のレベルに挑戦していいのかなと」
同じ石川県内で戦ってきた星稜高の林和成監督が「北陸のピッチャーで、あんなに気持ちを前面に出す選手は久しぶり」と感嘆するほど、金沢高時代からマウンド上の釜田は勇ましかった。
「釜田は自分で考えられる投手。しかも、深く」
普段は、寡黙で、実に生真面目なタイプだ。
昨年の高校全日本チームで、おそらくもっとも口数の少ないのは吉永だった。だから、釜田は吉永ともっとも馬があった。それだけに余計、吉永と自分を比べてしまったのだ。
そんな中、プロ入りを勧めたのは、金沢高の前監督の浅井純哉だ。
「釜田は自分で考えられる投手。しかも、深く。だから、大学や社会人に行くのはかえってマイナスになるんじゃないかと思った。というのも、大学も社会人も最初は野球以外のことでいろいろ気を使わなければならないじゃないですか。そうすると、彼みたいなタイプは野球に没頭できないと思うんです」
結局、恩師のそんなプッシュもあり、釜田は「自分を伸ばすのにもっとも環境のそろっているところに行くべき」と考え直し、最終的にプロ入りを決断。ドラフト2位で東北楽天ゴールデンイーグルスへ入団することとなった。