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オリックスで孤軍奮闘のイ・デホは、
本物の“アジアの大砲”になれるか? 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNanae Suzuki

posted2012/06/04 12:40

オリックスで孤軍奮闘のイ・デホは、本物の“アジアの大砲”になれるか?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

韓国ではボール球の範囲までヒッティングゾーンを意図的に広くして積極的に打っていたというイ・デホ。日本でも最近ようやくストライクゾーンにこだわらない覚悟ができ、それから好調になったという。

 すべて、見透かしているかのようだった。

 昨季セ・リーグの新人王・澤村拓一を前にした時の、イ・デホ(李大浩)の打撃である。

 6月2日のオリックスvs.巨人戦。

 オリックスの主砲イ・デホは1回裏、1死一、三塁の好機で打席に立つと、澤村が力いっぱい投げ込んだ145キロのストレートを右翼前にはじき返す適時打を放った。2打席目は1死一塁から初球を右翼前、3打席目は1-2と追い込まれながら、目の覚めるような打球を中前へはじき返した。

 2打席目は初球だったが、1、3打席は澤村の変化球を見切って、ストレートを捉えたものだ。韓国から来た大砲とセ・リーグを代表する若手有望株の対決は、澤村の魅力を木端微塵にしてしまうような、イ・デホの凄まじい打棒だけが目立っていた。

「私はストライクに来た球を打っていくタイプじゃない。タイミングがあって、球種が合えば、ボール球になっても十分に打てる。澤村という投手の名前は知っていた。若手の中でもいいピッチャーだと。でも、相手のピッチャーよりも、自分の調子が上回っていた。積極的な気持ちで打席に立てていたから、十分な仕事ができたのだと思う」

 淡々と勝負を振り返るイ・デホの様子に、確固たる主砲の矜持を感じた。

過去の韓国人打者は「アジアの大砲」というには物足りなかったが。

 韓国球界のスター選手が日本にやってくるという例は、彼に始まったことではない。

 韓国で年間56本塁打のアジア記録を打ち立てたイ・スンヨプ(オリックスなど)や第2回WBCの日本戦でも活躍したキム・テギュン(ロッテ)など、韓国のスター選手たちは、来日するたびに多くの期待と注目を集めてきた。

 だが、彼らがその前評判ほどに活躍できたとは言い難い。イ・スンヨプはそれなりの活躍ができたとはいえ、「アジアの大砲」にしては物足りなかったし、キム・テギュンにいたっては、契約途中に帰国し、そのまま退団するという後味の悪さを残して日本球界を去っていた。

 そんな状況の中で、韓国で2度の三冠王をとったイ・デホが日本へやってくる――。

 昨オフの関西地区を騒がせたこのニュースに、どれほどの人物が期待を抱いていたのか疑問だった。

<次ページへ続く>

【次ページ】 イ・デホの成功を確信していたオリックス。

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