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<復活への決意を語る> 上田桃子 「強さと優しさを武器に」 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byAkiko Kato

posted2012/03/08 06:00

<復活への決意を語る> 上田桃子 「強さと優しさを武器に」<Number Web> photograph by Akiko Kato

自らに課した日本ツアー完全復帰への条件。

――今季も日米両ツアーかけもちですね。米ツアー挑戦直後と今では日本の試合に出る意味も変わってきたんじゃないですか。

「今はどっちのツアーで勝ちたいというこだわりもなくなりました。この4年間は確かにアメリカで勝ちたかったんですけど、そもそもプロになろうと思った時は、どの試合も関係なくすべての試合で勝ちたかった。だから昔のように『出た試合で勝つ』というのが今の自分の目標です。海外も日本の経験もどちらも役に立ってるし、米ツアーだけでプレーするのは人生を考えた時に自分のハッピーにはつながらないと感じました。長居しようという考えもなくなって、ある部分まで習得できたら日本に帰ってこようと考えてます」

――ミズノクラシックで勝った時のインタビューを覚えています。上田さんは「年間5勝した藍ちゃんやソレンスタム、オチョアのような強い選手と同じ景色を見たい。それが低迷してもアメリカに残り続けた理由だった」と言っていました。つまりそういう景色が見えたら日本ツアーに完全に戻ってくると。

「そうですね。まずは自分がしっかりと自立すること。その上で他の選手とお互いに認め合って会話ができたら日本に帰りたい。それは言葉だけじゃなくて、プレーも含めての話。優勝を争った選手同士がお互いにしゃべらなくても分かる雰囲気、空気感というのを私はまだ味わっていない。やっぱり藍ちゃんは日本人選手の中でそれが一番できてますからね」

――それでも5年前の景色とはかなり違うものが見えているでしょう。

「ゴルファーとしての景色だけじゃなくなりました。ゴルフをしていない生活というのも海外では貴重なんです。もしゴルフがダメでも、子供が生まれた時にこんな世界があるんだよって話ができるし、そういうのを含めてアメリカに行ってよかったと思います。でもどうせなら大好きなゴルフでトップに立った経験を色々な人に話したいし、日本にいる人にも伝えていきたい。だからこそ、海外でも結果を出すことがマストなんですよね」

 今季初戦となったタイでの米ツアーは、開幕前に胃腸炎に見舞われて不完全燃焼に終わった。翌週は2位発進したが結局13位。そして日本の開幕戦へと戻ってきた。これからも思い通りにいかないことは山ほどあるだろう。そんな時こそ試されるのは上田の言う「強い気持ち」。魔法の効果はとうに消え失せ、ガラスの靴もどこにいったか分からない。それでもかつてのシンデレラは泥にまみれて裸足で歩き始めている。

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