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<復活への決意を語る> 上田桃子 「強さと優しさを武器に」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAkiko Kato
posted2012/03/08 06:00
宮崎合宿で取り戻した“絶対に勝つ”という思い。
――宮崎ではそういう強い気持ちを思い出しながら練習できたわけですね。
「コーチをつけずにオフを過ごしたのは初めてだったんです。これまではスキルだとかすごく小さな部分にこだわっていたんですけど、今年は毎日ラウンドしてゲームの感覚を楽しむことができました。特に男子プロが相手なので、絶対に勝つ! という気持ちで毎回ラウンドできたんですよ」
――メンタルの変化はプレーにもいい影響をもたらしましたか?
「ここ何年かすごく悩んでいたパターも、こんな単純なことが大事だったんだという発見がありました。1日何時間も悩んで悩んで練習してきたのに、本当にこんなことなの? っていうほど単純なもの。その大きな割合を占めてるのは、ここに打つぞっていう強い気持ちなんですね。
谷口さんに言われ続けてたのは『YESかNOしかない。そこに打つか打たないか。打ちたいか打ちたくないかだけだ』と。ここに打ちたいんだけど……と言い訳する“だけど”の部分はいらないんだと。確かにラウンドしていても、私の方がカップに近いのに谷口さんは外からスコスコ入れてくるんですよ。しかも私が試合でするよりも派手なガッツポーズをしてくるんです。それに対して私は笑えなかったんですよね」
――谷口プロは合宿の前にも宮崎まで来て個人的に練習を見てくれたみたいですね。
「そのときもコースで練習していたら雨が降ってきて、風も吹いて凍えそうな日があったんです。一人なら絶対にやらない状況でしたけど屋根付きの町の練習場に連れて行かれて、そこでも“寒い寒い”と言っていたら、『じゃあイギリスの試合だったらどうするんや。寒くてもやるやろ』って。谷口さんの方が寒かっただろうし、自分のことでもないのに、最後まで一言も寒いとかやめようと言われることはありませんでした。
谷口さんは勝ちたいからこそ、それだけ強い気持ちでいられる。勝ちに対する貪欲さをあの歳(44歳)になっても私以上に強く持ってるんです。負け慣れしてたわけじゃないんですけど、私はそんな気持ちを忘れかけてた。自分が人に負けないと誇れるのはそこだったなと思い出しました。この練習をやったからこの部門の数字がよくなるとは言えないですけど、今年のオフが一番気持ちを込めて練習できました。だから絶対に大丈夫だと思える自信が今はあります」
――谷口さんはあくまでも選手だから、シーズンが始まれば頼ってばかりはいられないでしょう。だけど、上田さんにとってはそれもプラスになりそうですね。
「谷口さんは見て盗めというタイプの人だから、ああしろこうしろというわけじゃないんですよ。自分の受け取り方、考え方次第なんです。やっぱり最後に頼れるのは自分だけなのでそれは構いません。すごく孤独を感じることが年に1回は必ずあるので、そういう時も強くいられるブレない自分を持つことは大事ですね」