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モウリーニョ2世になるはずが……。
ビラスボアスがチーム不振で崖っぷち。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/02/29 10:30

モウリーニョ2世になるはずが……。ビラスボアスがチーム不振で崖っぷち。<Number Web> photograph by AFLO

ダニエル・スタリッジに強い口調で指示を伝えるビラスボアス。人心掌握は得意分野だったはずだが……。戦術の浸透を待てる残り時間は確実に短くなってきている

 英語で「ノー・ペイン、ノー・ゲイン」と言われるように、痛みを伴わずに大きな成果を上げられるほど現実は甘くない。この諺を地で行くのが、アンドレ・ビラスボアスが指揮を執る今季のチェルシーだ。

 新監督が、ロングボールも厭わない堅守速攻から、攻撃的なパスサッカーへのスタイル変更に着手し始めて約半年。チェルシーは、プレミアリーグでの優勝争い脱落に続き、チャンピオンズリーグ(CL)でも、ベスト16敗退の瀬戸際に立たされている。

 2月21日のCL決勝トーナメント1回戦第1レグ、チェルシーはナポリに2点差で敗れた(1-3)。

 4-2-3-1システムでトップ下を務めたフアン・マタが、敵のクリアミスを逃さずに決めて先制したが、リードは10分強しか持たず。攻撃姿勢の反動とも言える守備の乱れから、カウンターの餌食となった。

 翌日の国内紙では、解雇のプレッシャーが高まったビラスボアスに対し、風光明媚なイタリアの都市を讃える「ナポリを見てから死ね」という格言をもじり、「ナポリを見て死ぬ」という表現が目に付いた。

メディアは“アンチ”派の古株排除を非難するが……。

 敗軍監督の采配は、「自殺行為」とまで言われて非難された。

 この酷評は、カウンターを得意とするナポリとのアウェイゲームで採用された攻撃的な陣形を批判したというよりも、先発イレブンにフランク・ランパード、アシュリー・コール、マイケル・エッシェンが含まれていなかった陣容をメディアが問題視したことによる。

 チェルシーでは、ナポリ戦を前に、ビラスボアスのサッカー哲学が全員に受け入れられてはいない内情を、監督自身が認めていた。

 ランパードとコールは、“アンチ”派の中心と言われる古株。逆に、中盤で先発したラウル・メイレレスとラミレス、最終ラインに顔を揃えたダビド・ルイスとジョゼ・ボシングワらは、言葉も同じポルトガル語を話すビラスボアスの“シンパ”と見られている。

 つまり、新監督は、権力の所在を明らかにすべく、反対勢力にベンチスタートを命じたと解釈されたのだ。

【次ページ】 完璧とは言えないが、納得できる“シンパ”の起用。

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